投手として見れば息の抜けない打線だが、機動力は皆無に近かった。チーム最多は鈴木尚広の9盗塁で、チーム盗塁25個は平成史上両リーグで最少の数字だった。空中戦に特化した打線で33試合連続本塁打のセ・リーグ記録を樹立。リーグトップの738得点をたたき出している。
だが、これだけのタレントをそろえて本塁打を量産した打線で優勝を逃している。首位・中日に8ゲーム差をつけられて3位。確かに一発に依存した打線はもろさと隣り合わせでもあった。1点を取り合う接戦になると、競り負けるケースも少なくなかった。だが、V逸の要因として打線を責めるのは酷だろう。
最大の誤算はチーム防御率4.50と崩壊した投手陣だった。以下は主な先発陣の成績になる。打線と同様に豪華な顔ぶれだが、不本意な成績に終わった投手が目立った。
上原浩治 13勝5敗 防御率2.60
工藤公康 10勝7敗 防御率4.67
桑田真澄 3勝5敗 防御率6.47
高橋尚成 5勝10敗 防御率5.44
林昌範 3勝9敗 防御率4.89
久保裕也 7勝6敗8セーブ 防御率4.08
木佐貫洋 7勝8敗5セーブ 防御率5.03
この年は「打高投低」のシーズンで、リーグ優勝を飾った中日を除き、セ・リーグ5球団のチーム防御率が4点台だった。その中で孤軍奮闘したのが上原で、最優秀防御率を獲得した。だが、2番手以降の先発投手が不安定だった。久保、木佐貫が先発、救援でフル回転しなければいけなかった状況が苦しい台所事情を象徴している。
春先から投手陣が打ち込まれることが多く、4月を借金1の5位で終える。5月に入ると、打線で圧倒して試合の主導権を握る試合が目立つように。5月26日から8連勝して首位に立つが、懸念していた投手力が致命傷となった。6月22日から2位・中日との首位攻防3連戦で計29失点と打ち込まれて同一カード3連敗と勢いをそがれる。