いざ有名になると、いたずら電話がかかってきたり、郵便物を盗まれたり、熱狂的なファンに付きまとわれたり。

「でも、注目されて迷惑を被ることはそれほど不快ではなかった。だって僕は、ビートルズになりたかったんだからね(笑)。今、当時の自分たちの演奏や歌を見ても、ちゃんと一回一回しっかりやっている。同じ曲を何度も歌うのは正直苦手だったけれど、ヘンに慣れることなく、毎回ベストを尽くしていた。それは良かったと思います」

「銀河鉄道999」は、タケカワさんにとって、初めて「日本語でも英語でもどっちでも自然に歌える!」と手応えを感じられた曲だったという。

「当時の僕は全部注文制作でした。『こういう内容でこういうイメージの曲を』っていうオーダーを聞いた上で、作るときは、『これが、今私が思う最高の曲』であり、かつ『その当時誰も聴いたことがないもの』ということを強く意識していました。『999』に関しては、何の影響も受けずに作った最たるものです。世界中のどこを探してもなかった曲だと思います」

 毎日のルーティーンを訊ねたとき、タケカワさんは、「同じ日を2回迎えたくないので、ルーティーンは作らない」と言った。昨日とは違う今日を生きたいという思いが、すべての原動力になっているのだと。

(菊地陽子 構成/長沢明)

タケカワユキヒデ/1952年生まれ。埼玉県出身。音大教授の父を持ち、5歳からバイオリン、10歳から作曲を始める。75年東京外国語大学在学中にソロアーティストとしてデビュー。翌年ゴダイゴ結成。作曲とボーカルを担当し数々のヒットを生む。現在は音楽活動のほか、エッセイなどの執筆、テレビ・ラジオ出演、講演、コンサートなど幅広く活躍。

週刊朝日  2021年1月29日号より抜粋