矢内:今回のコロナの最初のころ、ヨーロッパの政治家たちは「芸術文化は人間生活に必要なものだ」と明言していますが、そういう認識が日本の政治家たちは薄いなと思いますね。

林:旅行業界の声は政府に届くのに、エンタメ業界の声が政府に届かない一つの要因として、「業界として、国会に議員を送り込んでいないからだ」という声もありますね。

矢内:業界の声がちゃんと政府に届いてないことは事実です。芸術文化、エンターテインメントの世界の人たちは、政府におもねることがあってはいけないという大原則でやってきた経緯がありますから、政治の世界に自分たちからアプローチしてこなかったんです。

林:なるほど。「好きなことをやってるんだから仕方ないじゃないか」という声もあって。

矢内:残念ながらそういう見方をされる方もいます。でも、小説の世界もそうだし、芸術文化、エンターテインメントがどれだけ多くの人たちの心の支えになっているか。エンターテインメントは、励ましたり勇気づけたりする力を間違いなく持ってるわけですよね。

林:そうです。エンタメ業界にも、実際にいろいろと弊害が出てるわけでしょう? わりと有名な俳優さんたちも、CMをやってる方以外は大変みたいで、裏方の人は田舎に帰る人も多いと聞いてます。

矢内:そうなんです。このままだと、この業界を支えているたくさんのフリーランス契約の個人事業者たちがやっていけなくなり、コロナが収まってもライブ・エンタメ業界が成立しなくなることを心配しています。追い打ちをかけたのが大晦日の電車の終夜運転の中止で、カウントダウンイベントも軒並み中止。しかも、ロック系、ポップス系のコンサートは、入場制限がキャパシティー50%、上限5千人という設定で、コンサートがビジネスとして成立しないから、ほとんど開催されず、対象となるコンサートそのものが存在していません。これらの制限も、去年の11月で外れる予定だったのが、3カ月延長されて今年2月までになりましたからね。

林:三枝(成彰)さんなんて、ヤケになって「クラシック音楽は滅びるぞ!」とか言って。

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