矢内廣 (撮影/写真部・高野楓菜)
矢内廣 (撮影/写真部・高野楓菜)
矢内廣さん(左)と林真理子さん (撮影/写真部・高野楓菜)
矢内廣さん(左)と林真理子さん (撮影/写真部・高野楓菜)

 ぴあ創業者で社長の矢内廣さん。エンタメ業界の代表として、コロナ禍で大打撃を受けている窮状を訴えるものの、その声は政府になかなか届かず、作家・林真理子さんとの対談でも「このままでは業界が成立しなくなる」と強い危機感を訴えました。

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林:矢内さんは、私が幹事長をしているエンジン01(文化人のボランティア団体)の副幹事長と事務局長で、私も矢内さんがおやりになっている「チームスマイル」(東日本大震災後のエンタメを通じた復興支援活動のための一般社団法人)の理事をやらせていただいて、日ごろから親しくさせていただいてますが、あらたまってお話するのは初めてかもしれないですね。

矢内:ええ、そうですね。

林:正月早々、コロナの話題で気が重いですが、矢内さんはコロナが出始めた去年の3月でしたか、安倍前総理のところに行って「このままだと日本のエンタメ業界は大変なことになります」と訴えられたそうですね。そのとき安倍さんはなんとおっしゃったんですか。

矢内:そのときの模様は、口外しないことになってるので、話せないんです(笑)。

林:でも安倍さん、もう辞めちゃってるんだし(笑)。

矢内:政府の偉い方と話していると、最初に「損失補填は税金ではできません」と言われるんです。「えっ?」と思うんですけど、そうじゃない例は過去にいくつもあるんですよ。例えば、かつて産業再生機構が扱ったいくつかの大企業の例や、リーマンショックのあとの銀行もそうですよね。最近の大手航空会社の例もそうですし、いずれも経営がうまくいかなくなって経営破綻した結果、公的資金、つまり税金を注入されたわけです。だけど、「エンタメ業界の損失補填は税金ではできません」とおっしゃる。私たちは政府の自粛要請に応えているわけですよ。

林:はい、そうですよね。

矢内:これは費用であって損失ではない。その費用は政府が補償するのが正当な考え方だと思いますよ。それを申し上げてるんですけれども、どうもご理解いただけないんですね。

林:それはつらいですね。

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