まず、申告する収入(売上高)を毎年950万円前後に抑えているような人。原則として2年前の売上高が1千万円を超えると、消費税の申告義務が生じる。このため、「納税を逃れるために所得を調整しているのではないか」と疑われやすいという。

 次に、架空の副業で赤字が出たように装う「エア副業」。全体の所得から、その赤字分を引く「損益通算」で納税額を少なくしようとする行為だ。会社員の場合、副業で出た赤字が会社からもらった給料を上回ると、確定申告をすれば天引きされた「源泉所得税」が全額返ってくる。

「明らかな脱税で、税務署から指摘されたら重加算税が課されたり、額によっては査察事案に発展したりする可能性もあります。絶対にやってはいけません」(元国税調査官で税理士の佐川洋一さん)

 架空でなくても、副業で得られた収入は注意が必要だ。佐川さんのもとにも、副業に関する相談が増えているという。

「事業所得として認められれば、給与所得との損益通算は可能ですが、雑所得だと損益通算はできません。『反復継続性の有無』などによって区別されるのですが、勝手に判断せずに税務署や税理士に相談するのが賢明です」(同)

 仮想通貨で高収入を得た「億り人」や、商品転売で稼いだ「転売ヤー」も、申告を忘れてはいけない。

「国税局や税務署には電子商取引などの専門の担当者がいて目を光らせています。取引などの情報は入手することもでき、申告漏れがあれば指摘を受けやすい。とくに注意したいのは最近、相場が上がっているビットコインなどの仮想通貨。忘れがちなのは、仮想通貨同士の交換で利益を上げたケースです。現金に換えていなくても、もうけが出ていれば申告する必要があります」(同)

 このほか、売上高から税金などを引いた、いわゆる「手残り」が著しく低い人や、同規模同業者に比べて粗利率が著しく低い個人事業主などは目をつけられやすいという。調査の対象になりやすい主な例のリストを上に示したので参考にしてほしい。

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