それもそうだ。「デュエリスト」(05)、「チョン・ウチ 時空道士」(09)、「義兄弟 SECRET REUNION」(10)……挙げればきりがない。ところが「でも……」と付け加えるように言ったのは「ゾンビが相手なのは初めてだったので、息を合わせるアクションとは違って難しかった部分もあります」。

 攻撃をよけもせず、痛みも感じないゾンビとの戦いにはさすがに戸惑ったようだ。特に好きなシーンは、カーチェイスだという。

「指折りの名場面になったと思うし、韓国内外での評価も高かった。ゾンビを引き寄せたり、散らしたり、というアイデアもおもしろかった」

 20分余りのカーチェイスは見ものだが、そのハンドルを握るのが女の子(ミンジョンの娘ジュニ)というのも意外性があった。「新感染」から4年の歳月が流れ、半島で生き残った人たちはゾンビの特性を熟知して戦う点が、続編のだいご味でもある。「人間対ゾンビだけでない、人間対人間の戦いにも注目してほしい」と強調した。

 カン・ドンウォンは俳優としてデビュー後しばらくはドラマにも出たが、映画「オオカミの誘惑」(04)で一躍スターダムに駆け上がって以来、映画だけに出続けている。一方、近年韓国ではドラマにも映画並みの製作費が投じられることが多く、映画人材がたくさんドラマでも活躍している。ドラマ出演の可能性を聞いてみると、「当面はスケジュール的に難しいけども、出ないと決めているわけではない。ドラマと映画の境界、映画館と家の境界もだんだんなくなってきていますし」と、ポストコロナも見据えているようだった。

 今後どんな役をやりたい、ということより、「いい人たち、おもしろい人たちと仕事をしていきたい。どんな監督、俳優、スタッフと仕事をするかが自分にとってはとても大事」と話す。

 このインタビューの数日後、是枝裕和監督の次作にカン・ドンウォンが出演することが発表された。仮タイトル「ブローカー」という韓国映画で、カン・ドンウォンのほか、ソン・ガンホ、ペ・ドゥナの出演も決まっている。これ以上ない「いい人たち、おもしろい人たち」に違いない。

 カリスマたっぷりのトップスターと、近所のお兄ちゃんのような気さくさ、この両面がカン・ドンウォンならではの魅力であり、ヒーローでありながら普通の人の目線を持つジョンソクとの共通点だ。

(構成/ライター・成川彩[在ソウル])

週刊朝日  2021年1月22日号