現役時代の桑田真澄氏=2005年3月(C)朝日新聞社
現役時代の桑田真澄氏=2005年3月(C)朝日新聞社

 誰もが驚いた。春季キャンプまで3週間を切った1月12日という異例の時期に、巨人が桑田真澄氏の「投手チーフコーチ補佐」就任を発表した。

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 通算173勝を挙げたが、2006年に巨人を退団する際、正式発表を待たずに自身のホームページで「ジャイアンツのユニホームでマウンドに立つのは、おそらく最後になる」と記して球団上層部の怒りを買った。

 当時の監督が原辰徳監督だった。「ショックを受けているのは原監督だろう」という声が上がり、桑田氏は指導者として巨人に戻ってこられないという認識だった。実際に現役引退から14年間、一度もコーチのお呼びの声はかからなかった。

 だが、原監督は桑田氏を呼び戻した。タレント活動をしていた元木大介ヘッドコーチ、宮本和知投手チーフコーチを呼び戻した時も仰天人事だったが、衝撃ははるかに上回る。巨人に長年貢献した功労者の桑田を戻したいという指揮官の思いが実った形だ。 

 現役時代から理論派として知られる桑田氏は引退後に早稲田大大学院や東京大大学院で知識を学び、東大野球部特別コーチの経験も。原監督はその手腕に期待を寄せている。セ・リーグ3連覇を目指す巨人は菅野智之以外の先発投手が心許ない。

「桑田氏の指導で伸び悩んでいる若手の潜在能力が引き出される可能性が十分にあります。畠世周、今村信貴、高橋優貴、桜井俊貴、太田龍、左のエースとして期待された田口麗斗……。高卒2年目の昨季、9勝とブレークした戸郷翔征も桑田氏の指導でさらに飛躍できるチャンスです」(スポーツ紙巨人担当記者)

 阿部慎之助2軍監督が確実と見られた次期監督についても、行方が分からなくなった。現役時代から阿部、桑田両氏を知る球団OBは、2人の性格は対照的と分析する。

「阿部2軍監督は厳しさを前面に出すスタイルで選手を鍛え上げるタイプ。一方、桑田氏は根性論を嫌がり、科学的根拠を持った野球理論で選手に寄り添うイメージです。個人的には桑田監督を将来的に見たい。今までになかった監督像で球界を変革するかもしれません」

 15年ぶりに古巣に戻る桑田氏の手腕が注目される。(梅宮昌宗)

※週刊朝日オンライン限定記事