ところが、受け入れ先の病院が決まらないのか、救急車はなかなか発車しない。夜間診療が可能な病院はもともと数が限られている。新宿区のホームページを見ると、救急医療機関と表示されているのは11カ所の大病院しかない。しかもそのクラスの病院は現在、コロナ患者の対応に追われ、新規の受け入れは難しいケースも多い。 

 結局、救急車が出発したのは、男性が乗せられてから40分近く経ってから。この間、救急隊員は何カ所の病院に受け入れ可否の電話をし続けたのだろう。 

 仮にだが、男性の店がこの時期、急性アルコール中毒になる危険もある一気飲みを容認していた結果、救急車を呼ぶ事態になっていたとしたら、ただでさえ医療が切迫している病院も出ている中、貴重な医療資源の無駄遣いにつながるのではないだろうか? 

 2時半ごろになると、一時期より人の姿は減っていた。この地域のランドマーク的な存在のバッティングセンターの近く。路地裏で女性がホストを怒鳴り散らしている光景を見かけた。女性はマスクをしていたが、ホストはノーマスク。

 ざくっと言えば、自分より他の客を優先したのが許せない、ということらしい。女性の職業はわからないが、どう見ても20代前半。ホストは、10代?というほど幼い顔つきに見えた。10分ほど続いただろうか。最後はホストが冷えきったアスファルトに両手をついて頭を下げ、ようやくおさまった。 

 緊急事態宣言後でも未明まで“闇”営業し、寒空の中、路地で土下座。ホスト稼業とはいかに……。 

 3時近くになり、空腹を満たそうと思ったが、24時間営業の外食店はやはり「テイクアウトのみ」の店ばかり。あきらめて帰路につくことにした。新宿駅前から計測を始めた歩数計は、その時点で1万2千歩超。帰宅後、念入りなうがいと手洗いをしたのは言うまでもない。
(高鍬真之)

※週刊朝日オンライン限定記事