巨人の菅野智之(C)朝日新聞社
巨人の菅野智之(C)朝日新聞社

 巨人の菅野智之が契約更改交渉に臨み、1億5千万円増となる年俸8億円の1年契約でサイン。2003、04年のペタジーニ(巨人)の600万ドル(当時約7億2600万円)を上回る日本球界最高額に上り詰めた。

 破格の年俸だが、積み上げてきた功績を考えれば納得だろう。昨年は開幕13連勝を含む14勝2敗、防御率1.97。3度目の最多勝、初の最高勝率(8割7分5厘)、2度目のセ・リーグ最優秀選手(MVP)を受賞してリーグ連覇に大きく貢献した。オフにはポスティングシステムでメジャーリーグへの移籍を目指したが、交渉期限までにまとまらずに残留が決定。来オフに海外フリーエージェント(FA)権を行使して再びメジャー挑戦する可能性が高い。

「菅野も気持ちを切り替えているでしょう。再びメジャー挑戦するなら今年の活躍が重要になります。31歳と決して若い年齢ではないので、今年が良くなかったらメジャー球団の評価は変わってくる。年俸8億円から大幅ダウンになることも覚悟しなければいけない。新型コロナウイルスの影響で各球団の財政状況は厳しいですから。本人もそれは十分にわかっていると思います」(スポーツ紙の巨人担当記者)

 過去に日本球界を代表する投手たちがメジャーに挑戦したが、その契約形態は様々だ。田中将大(ヤンキースからFA)は13年に楽天で24勝0敗と驚異的な成績を残し、オフに7年総額1億5500万ドル(当時約161億円)でヤンキースに移籍。当時25歳で1年目の年俸は2200万ドル(当時約23億円)だった。

 また、ダルビッシュ有(現パドレス)は日本ハムからレンジャーズにポスティングシステムで史上最高の入札額5170万ドル(当時約39億8千万円)で移籍。6年総額6千万ドル(同約46億円)の大型契約で、1年目の年俸は550万ドル(同約4億2千万円)、2年目以降に年俸が上がる契約だった。

 一方、前田健太(現ツインズ)は変則的な契約だった。基本給は312万5千ドル(同約3億3千万円)と抑えられ、最大で1015万ドル(同約11億円)の出来高が付いた。

 西武からポスティングシステムでマリナーズに移籍した菊池雄星は3年総額4300万ドル(当時約47億3千万円)がベースの契約で、3年後に球団、選手がそれぞれ延長オプションを持っている。1年目の年俸は1千万ドル(同約11億円)。米国メディアは、菅野側は今回のメジャー挑戦の際に菊池と同等か、それ以上の条件を求めていると報じていた。

 メジャーのあるスカウトは新型コロナウイルスの影響で、選手の契約は「冬の時代」が数年続くと予測する。

「菅野の代理人を務めるジョエル・ウルフ氏が、『各球団の年俸額が信じられないほど似通っていて不快になった』という旨の発言をしたと報道で確認したが、決して談合しているわけではない。どこの球団も自由に使えるお金が限られているんだ。コロナ収束のメドが立っていないし、今年も無観客試合でシーズンが開催される可能性が十分にある。財政状況は厳しいままだろう。選手たちはコロナ以前の契約条件を望めないと理解したほうがいい」

 結果を残せば報酬を求めるのは当然だ。一方で新型コロナウイルスが及ぼす球団の経営状況も配慮しなければいけない。夢をかなえるためにどこまで妥協するべきかという悩みが生まれてくる。ただ、コントロールできないことを考えても仕方ない。菅野が昨年以上の活躍で来オフにFA権を行使した際は、メジャー球団による争奪戦が勃発するだろう。=金額は推定(梅宮昌宗)

※週刊朝日オンライン限定記事