昨年、ハンガリーのブダペストであった競泳の国際リーグ(ISL)に出場して勉強になったのは、バブルという感染対策です。PCR検査を徹底した上で宿舎と試合会場を中心に参加者の行動範囲を制限して、感染者を一人も出さずに国際大会が実施できました。
この対策は、様々な分野で応用できるような気がします。スポーツでいえばJISSや味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)を中心とした区域にバブルの考え方を採用すれば、合宿中は公共交通機関を使わないなどルールを定めて、感染リスクを避けながら練習に打ち込む環境が作れるように思います。
昨年は五輪延期という想定外の出来事を経験し、今年も新型コロナウイルスの感染拡大防止策を取りながら五輪を目指した練習が続きます。12月の日本選手権を終えてから、選手たちには「自分のことをコントロールできなければ泳ぎもコントロールできない」と話してきました。大事なことなので、これからも言い続けていきます。
緊急事態宣言が出ても練習拠点のJISSやNTCは利用できます。比較的安全な場所に身を置いているという意識があるので、今のペースをできるだけ守って、昨年の様々な経験から学んだことを生かしていきたいと思っています。
平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる──勝負できる人材をつくる50の法則』(朝日新聞出版)など著書多数
(構成/本誌・堀井正明)
※週刊朝日 2021年1月22日号