室井:そうですよね。史実に基づいてはいますが、あくまでエンタメ。この撮影をしてるときは、私たちもまさかコロナでこんなふうになるとは思ってなかったんですけど、この「米騒動」のすぐあとにスペイン風邪が猛威をふるったという経緯があって、歴史は繰り返すというか……。

林:スペイン風邪は、大正7年から10年にかけてですもんね。

室井:ただ、この映画を見て、富山の女の人はあんなにキツくて強いんだと思われたら困るので、富山の女性たちの名誉のために申し上げておくと、富山の女の人はすごく働き者だし、勝ち気だとは思うんですが、それを表には出さない。自分の意見を持ってても、真っ先に言うタイプの人は、わりと少ないんです。すぐそばにある金沢はきらびやかできれいなんだけど、富山は質実剛健というか、地味で表には出さないんです。

林:持ち家率、貯蓄率も日本でトップクラスですよね。

室井:そうなんです。蔵の中に全部しまっておくみたいな。

林:前に志の輔さんにここに出ていただいたとき、「富山の人は石橋をたたいても渡らない」っておっしゃってました。

室井:そのとおりです。私と一緒に住んでるおじさん(映画監督の長谷川和彦さん)は広島の出身なんですけど、新しい服を買うとすぐに着て、さらに着たまま寝ちゃうぐらい、扱いが雑なんです。富山出身の私からすると、新しい服なのに信じられない。私たちは蔵の中に寝かせて寝かせて、忘れたころに着るんですよ(笑)。

林:でも、流行から遅れちゃうじゃないですか。

室井:流行とかはあんまり気にしない。この靴カワイイと思って買っても、そのまま2年も3年も寝かせてから履くんです。あるときも、私が寝かせた靴を履いて空港を歩いてたら、お掃除ロボットがずっと後をつけてくるんですよ。なんでだろうと思ったら、靴の底が劣化して、黒いゴムがちぎれて廊下に点々と落ちていて。それを掃除するために、お掃除ロボットが追いかけてきてたんです(笑)。

林:アハハハ。おかしい。私、室井さんの連載エッセーを読ませていただいてますけど、こんな有名な女優さんなのに大丈夫かなと思うぐらい庶民的な行動をなさるんですよね。

室井:毎日、銭湯行ってるし。

室井滋(むろい・しげる)/富山県生まれ。1981年、映画「風の歌を聴け」でデビュー。「居酒屋ゆうれい」「のど自慢」「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~」などで多くの映画賞を受賞。2012年喜劇人大賞特別賞、15年松尾芸能賞テレビ部門優秀賞を受賞。新刊絵本『会いたくて会いたくて』(小学館)が1月29日発売予定。最新出演作となる映画「大コメ騒動」が全国で公開中。

>>【対談2:室井滋「本当は暗い役をやりたい」マイナスの感情を望むワケ】へ続く

週刊朝日  2021年1月22日号より抜粋