「戻りたいと相談したら、施設長らが大歓迎してくれた。終の棲家にしたい」(Cさん)

 筆者の塾生の中には遠方のケアハウスに行って「地方文化が合わなかった」と退去した人もいた。ケアハウス生活相談員はこう分析する。

「ケアハウスは地方自治体の補助金などで運営されているので、地元の入居者が多い。移住先が故郷や仕事で住んだ経験があるというケースはなじみやすい。親類や頼りになる知人が近くにいれば、こちらも助かります。移住する場合、体験入居制度がある施設を選んで雰囲気をつかむことをお勧めします」

 一方、岩手県から瀬戸内海の傍らにある香川県の「ケアハウス屋島」に移住したのは、大正14年生まれの女性Dさん(95)だ。Dさんが移住を決意したのは88歳のとき。

「夫が亡くなり岩手の家で一人暮らしをしていましたが、香川県に嫁いでいる娘が心配して、今のケアハウスを探してくれたのです」

 Dさんは現在、自立支援型の1人部屋(24平方メートル~)で暮らし、洗濯や部屋の掃除は自分でする。入居一時金は24万円、3食付きで月費は8万7千円(独自の特別サービス費を徴収)。

 もし、軽中度の要介護状態になっても併設の小規模多機能居宅介護施設を利用でき、夜はケアハウスの自室で休める。さらに介護が重度になったら敷地内の「サービス付き高齢者向け住宅」に移り、看取りまで対応できる。

「仲間とコーヒーを飲んだり、併設のデイサービスに行くのも楽しみ。思い切って移住してよかったです」(Dさん)

 ケアハウス屋島のスタッフによると、県外からの入居希望者はコロナ感染拡大以降、休止していたが、今後はPCR検査で陰性であれば、受け入れる方向という。

週刊朝日  2021年1月22日号より抜粋