世論へのアピールのうまさは以前から定評がある小池氏。実際、コロナ対応については菅首相側の優柔不断さがばかりが目立つ印象となり、政権への支持率も下落の一途をたどっている。前出の上田都議はこう話す。

「菅首相は小池氏に対して油断しすぎていたように思います。私は小池氏をそばで見てきたからわかりますが、このままでは小池さんにしてやられてしまいますよ」

 今年の夏には都議選が控えている。小池氏が特別顧問を務める地域政党・都民ファースト会の今後はどうなるのだろうか。2017年の都議選では55議席を獲得して都議会最大会派となったが、あれから3年が経過し、6人が離党。以前のような存在感は示せてはいない。上田都議も小池氏の方針に疑問を抱き、離党した一人だ。

「1月2日に小池氏らが内閣府で西村経産相と会談する前に、都民ファーストの会が小池知事に対して緊急事態宣言の内容について要望書を出しています。これも、今夏の都議選を見据えて都民ファーストの会の“実績”をつくる演出の一つだったのでしょう」(上田都議)

 ただ、こうした仕掛けが選挙で功を奏するかは未知数だ。前出の自民党都連の深谷氏が話す。

「選挙というのは直前までわかりませんが、都民ファーストの会に前回ほどのブームは起きないと思います。小池さんは劇場型の状況を作って、自分が『正義のスター』の立場に立てば、選挙にも影響してプラスになると思っているのでしょう。だけど、このコロナ危機の中で政治家がそんなことを考えてはダメですよ。パフォーマンスではなく命がけで危機を防ごうと心しないと、都民の支持は得られないでしょう」

 小池氏は2017年、「希望の党」を立ち上げて電撃的な国政進出を模索したものの、国民の支持が広がらず頓挫した経緯がある。今後、再び国政を目指す展開はあるのだろうか。「都政新報」の後藤編集長はこう語る。

「これまでの経緯を見ても、小池氏にとって都知事の座は国政へのステップだったと思います。だから、総理の座は今もチャンスがあれば虎視眈々と狙っているところはあるでしょう。ただ、今のところは具体的に国政に復帰する道筋が見えない状況なので、都政に軸足を置いて待機するしかない。政治的なパワーゲームをするのではなくて、もうちょっと地に足のついた取り組みを第一に考えてもらいたいなと思っています」

(本誌・上田耕司)

※週刊朝日オンライン限定記事

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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