やっと入れた差し歯がガクガクして痛いこと限りない。まるで、ままこのしりぬぐいで尻を拭かれているかのようだよ、という一句。トホホなんだけど、ほのかなユーモアも帯びている。

★見知らぬ男三人と下剤2リットル鰯雲(日土ぽぽんた)

 俳句としては音数が溢(あふ)れてるけど「見知らぬ男三人」「下剤2リットル」二つの数詞が困惑の場面を表現する。「鰯雲(いわしぐも)」は、トホホの笑いのようにぼんやりと広がる。

★蜜柑摘む摘む過活動膀胱炎(花紋)

 花紋さんは「過活動膀胱(ぼうこう)炎」という病名がリアル。しかも収穫作業となればさらなる悲惨。明るい蜜柑(みかん)山でのトホホだが、どこか自分を笑い飛ばしているように思えるのは、前半「摘む摘む」のリズムのおかげか。

「みかん摘み終えて夕陽の美しか」と眺める句利男さんは、無事に収穫を終えてのホホホだ。健やかで何よりですな。


 今回の兼題では、去年のトホホを詠んだ句が圧倒的に多かった。

「曜日さえ覚えられずに慚愧冬」と呟くのは、すそのあきこさん。私も似たようなもんだよ。だからしょっちゅう〆切(しめきり)日を忘れる。「年神さまアルコール液で荒れる手が」りんりん。さんには、うちの嫁が買ってくれたハンドクリームがいいよと教えてあげたい。「車道の手袋あれはおれのじゃなかろうか」とイサクさん。トホホな場面を巧く切り取る。「設問を読み間違えて枯菊や」と嘆くのは中学生の打楽器ちゃん。枯菊も次の季節に向けて新しい芽を育てる。気にすることはないさと励ましたい。

 さらに「当て逃げの傷や真冬の夜の愛車」事故に困惑する丹下京子さん。「隣地境界不明発覚年の暮れ」問題に直面する玉響雷子さん。「履歴書のさまよい歩く枯野かな」久巳子さんの再就職の道のり。みんな健気(けなげ)に生きているのだよ。


 そして、最後にこの一句。「初日の出今年はベランダで見やう」

 (7)パパさんの呼びかけだ。初詣に行けない初日の出も見られない、トホホ~と考えるより、うちのベランダの初日を楽しもうと考えるほうが精神衛生にいい。迎える初日をホホホと拝み、今年も俳句を杖として、ホホホと生きて参りましょう。

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