経済アナリスト 森永卓郎 (c)朝日新聞社
経済アナリスト 森永卓郎 (c)朝日新聞社

 スマートフォンやパソコンに保管した情報を、自分の死後、家族にどう残すか準備しているだろうか。デジタル機器のロックを解除できずに困る遺族も増えている。「デジタル終活」に取り組んだ森永卓郎さんに経験を聞いた。

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 経済アナリストの森永卓郎さん(63)は、デジタル終活を実践している一人だ。

「わたしは、すべての情報を妻と共有しています。(1)銀行口座や証券などの資産情報(2)パスワードやネット会員情報を一覧にしたファイルデータを各自のメモリーカードで共有しています。飛行機のマイレージも家族に相続できるんですよ」

 きっかけは、父の死だった。2006年に脳出血で倒れた。通帳の保管場所はおろか、自分がどこの銀行に口座をつくったのかを思い出せないまま、5年後に亡くなった。森永さんが相続人を代表して遺産整理を担当したが、ひどく難航した。

「当時は、亡くなった父親の口座があるかと銀行に問い合わせても、支店を特定していないと口座の有無すら教えてくれなかった。しかも、父の出生時から亡くなるまでの戸籍謄本を全て取得して金融機関に出さなければならない。転居の多い人でしたし、(東京都)文京区の戸籍謄本は空襲で焼失した。すると、その焼失したことを証明する書類が必要だと言われ、本当に苦労しました」

 九つの銀行口座を見つけた。だが、やっとの思いでたどり着いた口座の中には、預金額700円というものも。

「この体験からすぐに、自分のデジタル情報を整理して妻と共有しました。家族に苦労をかけてはいけませんね」

(本誌・永井貴子)

週刊朝日  2021年1月15日号