こうした情報銀行の事業を2019年7月に始めたのが、電通グループのマイデータ・インテリジェンスだ。

 専用アプリをダウンロードして登録している個人は、30~50代の女性を中心に約20万人。氏名や住所、電話番号、仕事・年収、興味・関心などの基本情報を伝え、さらに任意で住居や資産情報を提供する。一問一答で独自の「MEYポイント」を付与。ポイントはアマゾンギフト券などと交換できる。すべて回答すると数百円分程度のポイントを得られる。

「主婦層のデータは食品、飲料、日用品、化粧品や流通、保険、教育産業での価値が高い。子どもの出産、成長、結婚といった情報を的確にとらえ、生活者の許諾をとったうえでライフスタイルに沿った提案ができます」

 マイデータ社の森田弘昭最高執行責任者(COO)はこう説明する。個人情報を活用する企業は少ないものの、「常に100社ぐらいが利用してくれるようにしたい」。

 三菱UFJ信託銀行は21年3月末に情報銀行を本格化させる。データ収集のアプリを提供するとともに、家族状況や趣味など数十項目に及ぶアンケートのデータも活用していく予定だ。位置情報をもとに、週末に郊外に出かけることが多い人がいれば、旅行先でリモートワークもする“ワーケーション”を提案できるという。

■情報提供者も 常にリスク認識

 同行経営企画部の畑茜調査役は、対象とする個人について「上場企業のホワイトカラーを母集団として、一定の富裕層を取り込みたい」と話す。4~5年後にアプリ利用者を100万~200万人規模にする計画だ。

 三井住友銀行を傘下に持つSMBCグループは医療・介護・ヘルスケア分野の情報銀行をめざす。大阪大学医学部附属病院などと、医療データを活用する実証実験を進めている。

 みずほ銀行とソフトバンクが折半出資するジェイスコアは、専用アプリで個人情報を集めて人工知能(AI)で分析。信用力などを「AIスコア」として提供することをねらう。

次のページ