■副業で地方往来 短・中期滞在も

「ふるさと回帰支援センター」(東京)の相談も多くなっている。20年秋以降の相談件数は、過去最多だった19年の月平均を上回るペースだ。高橋公理事長(73)は「すでに住みたい地域を決めているなど、本気度が高い」と感じている。都心から電車で2時間圏内の北関東エリアなどが、利便性の高さから注目されているという。

「移住のような長期滞在だけではなく、『副業』を通じた短期・中期滞在など、今後は地方とのかかわり方にもバリエーションが生まれていく」

 こう指摘するのは、副業の認知促進に取り組む団体「ワークデザインラボ」の理事、石川貴志さん(42)だ。東京の出版・流通会社で働く石川さん自身、故郷・広島県の「創業サポーター」などを務める。

「地方で副業をする場合、例えば『日本酒』『温泉』など、自分の興味や関心を起点にプロジェクトを選ぶことができる。仲間ともつながりやすくなるのも魅力です」

 副業の収入は交通費程度の時もあるものの、「稼ぐという『結果』にとらわれず、自分は本業以外に何で稼げるのかを再確認する手段だと捉えてほしい」。

 みずほフィナンシャルグループやアサヒビール、JTBといった大手でも副業を認める動きが出ており、柔軟な働き方が広がりつつある。

 地方創生プロジェクトに取り組む慶応義塾大学の若新雄純特任准教授は話す。

「『地方』と言っても、実際にはグラデーションがあります。新型コロナの感染拡大を恐れて、都心部からの人の受け入れに敏感になっている自治体もある。ただ、人口10万人以上の都市は交通の便もよく、街にも溶け込みやすい。すぐに都心を離れるのではなく、地方都市と往来するスタイルが、フリーランスや起業家を中心に浸透するのでは」

 自分はこの先、どのように働き、過ごしていきたいのか。年初に考え直してみてはいかがだろう。(本誌・松岡瑛理)

週刊朝日  2021年1月15日号