舞台公演を終えた直後のインタビュー。落語さながらの話術に引き込まれる (撮影/写真部・加藤夏子)
舞台公演を終えた直後のインタビュー。落語さながらの話術に引き込まれる (撮影/写真部・加藤夏子)
風間杜夫 (撮影/写真部・加藤夏子)
風間杜夫 (撮影/写真部・加藤夏子)

 8月に映像の仕事で復帰してからは、舞台出演の合間に落語会を開催するなど、ほぼ休むことなく活動している俳優の風間杜夫さん。年末も、1月に上演される舞台『セールスマンの死』の稽古で忙しい日々を過ごす。アーサー・ミラーがピュリツァー賞を受賞した戯曲の、2018年のときと同じカンパニーでの再演だ。

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>>【前編/71歳・風間杜夫 コロナ禍でライブ配信やピアノに初挑戦】より続く

「滝沢修さんや仲代達矢さんら歴代の先輩俳優諸氏は、このウィリー・ローマンの役を『二度とやりたくない』とおっしゃったそうですが、僕は、もう一度やってみたかった。初演のとき、演出の長塚圭史くんも芝居の出来を誇らしげに語っていて。劇場の芸術監督の白井晃さんも褒めてくださった。関係者がこぞって、『なんとか再演を』と切望した舞台にまた立てることは幸甚です」

 初演のとき、「俺は太っているから嫌われるんだ」というセリフに対して、長塚さんに「腹にちょっと肉詰めたほうがいいかな?」と聞いたら、「そのまんまでOKですよ」と言われて少し傷ついた。「でも今回は本当に太っているからなぁ」と豪快に笑う。自粛期間を経て、舞台に立つことにどんな喜びを感じているのだろうか。

「11月に『女の一生』で久しぶりに舞台に立ってみて、ライブというものは、未来永劫なくならないだろうと確信しました。最近は、ネット配信なんてものが増えてきたけれど、今この時間、約束された時間に1カ所に集まるライブっていうのは、アナログの最極っていうのかな。同じ時間、同じ場所、同じ空間に居合わせていること。僕の若い頃はそれを“事件”と呼んでいたんです」

 客と演じる側の共犯関係──。演者の目線からすれば、長いようで短い人生のたった1日を、目撃しに来てくれた感覚が強くあったそうだ。

「劇場空間というのは、効率の悪い世界ですよ。たかだか何百人、多くて千人程度。その人たちの記憶に残るだけの儚い表現ですけど、だからこそ、価値があるというのかな。お客さんの意思と、僕らがお客さんに臨む、その気持ちがヒートするのが快感なんです」

 学生時代に演劇の魅力に取り憑かれ、自分の立つステージとして“小劇場”を選んだ。「その時点で、生の魅力に取り憑かれていた」と語る。

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