「次はもっと違ったことができるんじゃないか、と思うから……ですかね? 大変な場所に身を置くことは、自分を知ることにもつながりますし。あとは、一人でやる仕事ではないということが大きいですね。お芝居は、映像も舞台もみんなそうですが、みんなと一緒になって作るもの。『やりましょう』と言ってくださった人たちと頑張って、最後に無事に終えられたことを喜びたい。大げさに言えば、ものづくりに懸けている人たちが理想とする作品を構成する要素の一つになれたら、という感覚なのかも」

 とはいえ、小林さんの表現活動には、「書くこと」もまた含まれる。チームでする芝居と違い、書く作業はたった一人でする行為だ。「“頑張るシリーズ”の中では、かなり頑張らなければいけない仕事に位置するのでは?」と言うと、大きく頷いた。

「なるべく締め切りで慌てないようにと、締め切りの2週間前から、『いつやろうか』とずーっと考えています(笑)。真面目というより、小心者なんです。で、最後は、『書かなくても誰も困らない。誰も読まないんだから!』って開き直る、というか腹を括ってから書き進めます」

 依頼があるから頑張ってやるけれど、依頼がなかったらやらないらしい。「でも、書くことの効能も少しはあるかもしれない」と分析する。

「普段、私は、自分が思っていることをあまり人に言わないんです。でも、エッセーを書いているときは、たとえそれが嘘であっても、自分から何か感情を露わにしていくわけで。もしかしたら、何かのセラピーになっているかもしれない」

 14歳のデビューから40年以上が経つ。少女時代、小林さんは自分の未来をどんなふうに想像していたのだろう。

「未来の自分は、具体的には想像していなかったです。中間をすっ飛ばして、『とりあえず老後が幸せなら、その間はいろいろあってもいいや』と(笑)」

 となると、今はまさに“いろいろあってもいい”中間地点。70~80代の女性は、「私たちが若い頃に比べたら、今はいい時代になった」と言う人が多いが、今20~30代の女性たちは、「先の見通しが暗くて、将来のことを思うと気分が滅入る」と嘆く。まさにその中間である小林さんにとって“今の世の中”はどう見えているのか。

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