林:政治家の人からお金もらって、その人の都合のいいところだけを書く人もいますが、そういう人に身をゆだねる政治家もいれば、“まな板の鯉”的に、先生に「全てを聞いてほしい」という人もいるわけですよね。聞きづらいけど、どうしても聞かなきゃいけないことってあるじゃないですか。どうやって相手を怒らせずに聞くんですか。

御厨:いろいろ方法があるんですよ。まず僕一人で行くんじゃなくて、必ず大学院生とか若いのを連れて行くんです。後藤田正晴さんのときも、あの人は最初の選挙でものすごい選挙違反をしたんです。いよいよ話がそこに行ったときに、僕が聞いたら「その話はしたくない」と言われるかもしれないと思って、ものを知らない若いやつに聞かせようと思って……。

林:先生、そんな姑息な(笑)。

御厨:「俺が言い淀んだら、おまえが選挙違反のことを聞け」と前もって言っておいて、僕が言い淀んだときに、彼が「後藤田先生、最初の選挙のときに大量の選挙違反を出しましたが、元警察庁長官としてどういうお気持ちでしたか」ってストレートに聞いたわけ。そしたら後藤田さんは「君は言いにくいことをよく聞くなあ」と言って、そしてしゃべりましたよ。

林:そうか、戦略的に誰かに聞かせるという手があるのか(笑)。先生はこれから会って話を聞いてみたい人っています?

御厨:美智子上皇后さまにお話を聞きたい。僕のほうからの恋闕(れんけつ)の情(天皇を恋い焦がれる気持ち)があるんです。これはまあ無理でしょうけど、今の皇室美智子さまなしには考えられないわけですから、聞いておきたいですよ。どういう心境で皇室に入られて、どうやっていじめなんかに耐えて……ということを。

林:ほぉ……。ぜひ読んでみたいです。先生、ご苦労が多いと思いますけど、皇室のためにぜひお力をいただきたいと思います。「令和の小泉信三」になる方は先生しかいらっしゃらないので。

(構成/本誌・松岡かすみ 編集協力/一木俊雄)

御厨貴(みくりや・たかし)/1951年、東京都生まれ。75年、東京大学法学部卒。同大学助手、東京都立大学法学部教授、ハーバード大学客員研究員、政策研究大学院大学教授、東京大学先端科学技術研究センター教授を経て、現在東京大学先端科学技術研究センターフェロー、放送大学客員教授。内閣府公文書管理委員会委員長、「東日本大震災復興構想会議」議長代理、復興庁復興推進委員会委員長代理などを歴任し、2016年には「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」座長代理に就任。

週刊朝日  2021年1月1‐8日合併号より抜粋

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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