御厨貴さん(右)と林真理子さん (撮影/写真部・張溢文)
御厨貴さん(右)と林真理子さん (撮影/写真部・張溢文)
御厨貴 (撮影/写真部・張溢文)
御厨貴 (撮影/写真部・張溢文)

 東日本大震災の復興構想会議や天皇の生前退位についての有識者会議などで、日本社会のあり方を提言してきた政治学者の御厨貴さん。菅政権の迷走ぶり、コロナ禍の社会について、作家の林真理子さんと激論を交わしました。

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林:先生は皇室周り以外でも国のお仕事をいろいろなさっていて、お忙しいでしょう。

御厨:自然災害をどうするかが政治の一つの課題になっているところに、今度はコロナが出てきたでしょう。コロナというのは、政治家にとって最も苦手な分野なんですね。政治家は、何かが起きたときに終着点を見極めて、それに向かって計画を立てて走っていくのが得意ですが、コロナは終着点がないですからね。

林:経済だって回していかなきゃいけないし、菅さんは総理に就任早々、ほんとに大変だと思いますよ。

御厨:何をやっても右から左からつつかれますしね。コロナってみんなよくわからないから、一億総評論家になってるんですよ。一種のヒステリー社会になってますね。

林:ただ、菅総理も、官房長官のころは非常に冷徹ですごい人だと思ったんですが、総理になったとたんに、ずっと下を向いてモゴモゴ何か読んでるので、ちょっとイメージが変わりました。

御厨:官房長官のときには自信を持ってやれたことが、総理になってちょっと自信をなくしている感じがします。官房長官のときは、総理大臣に安倍さんがいてくれてこその仕事ですから、最後は安倍さんに頼ればいいという気持ちがあったんだけど、ご自身が総理大臣になって頼るところがなくなったのも大きいでしょう。

林:これじゃ、総選挙で一波乱も二波乱もありそうな……。

御厨:という感じになってきましたね。今まで2世3世のお坊ちゃんが総理大臣だったのが、菅さんは下から這い上がってきた人だということから、国民は「この人は、人の痛みがわかるぬくもりがある総理なんじゃないか」と最初思ったんだけど、数カ月でぜんぜんダメになっちゃった。

林:私、朝日新聞の「首相動静」を毎日読んでるんですけど、菅さんは会ってる人もそんなにおもしろそうな人じゃないし、食べることにも興味がなさそうで、食事はいつも「ORIGAMI」(官邸近くのホテル内のレストラン)じゃないですか(笑)。まだ安倍さんのほうが幅広い人と会って、いろんなところで食事していたような気がします。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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