御厨:公式には二人は会ってないことになってますが、確かに今はSNSでいくらでもつながれますからね。

林:話が変わりますが、聞いた話によると、先生が天皇退位の有識者会議の座長代理になられたとき、警備も厳重だったそうですね。

御厨:うちの前にポリスボックスが立ちました。だけど、ポリスボックスがあるというのは、それだけで心理的に負担でしたね。何しろ一日24時間、カメラでずっと撮ってますから、常に見張られてる気がするんですよ。庭にもカメラが設置されてるもんだから、僕は半年以上、自宅の庭に出ませんでした。ろくなものを着てないなと思われたくないから(笑)。

林:アハハハ。確かにポリスボックスがあると鬱陶しいでしょうね。たまには警察にお茶も出したりしなきゃいけないでしょうし……。

御厨:お茶は出しませんでしたけど、ゴミ出しがちょっとね。ふだんはうちの連れ合いがパッとゴミを置いてくるんだけど、「若い警察官がいる前を、私がスッピンで通るわけにいかないから、あなたが出してください」と言われて、僕が出すようになったんです(笑)。

林:先生がゴミ出しを?

御厨:ポリスボックスがなくなったときに、「これで元に戻ったな」と言ったら、「あなたの役目になったのよ」って(笑)。

林:どんな政治家にも臆することのない先生が、奥さまには頭が上がらないんですね(笑)。

(構成/本誌・松岡かすみ 編集協力/一木俊雄)

御厨貴(みくりや・たかし)/1951年、東京都生まれ。75年、東京大学法学部卒。同大学助手、東京都立大学法学部教授、ハーバード大学客員研究員、政策研究大学院大学教授、東京大学先端科学技術研究センター教授を経て、現在東京大学先端科学技術研究センターフェロー、放送大学客員教授。内閣府公文書管理委員会委員長、「東日本大震災復興構想会議」議長代理、復興庁復興推進委員会委員長代理などを歴任し、2016年には「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」座長代理に就任。

週刊朝日  2021年1月1‐8日合併号より抜粋

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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