若手の女優を撮影するときも、同じように試みた。

「読者にこう思って欲しかったんですよ。『俺が思ってる薬師丸ひろ子はこうじゃない! でも……この薬師丸もいいじゃん』と」

 撮影には、ヘアメイキャッパーやスタイリストなど多くのスタッフが参加する。スターたちは、メイク道具や衣装などが並べられ、万全の準備が整っているスタジオ=非日常空間に入ってくるのだ。ビートたけしは、「こんな不自然なところで、自然な表情をしろといってもできない」と言ったとか。

 他のモデルも、カメラの前で自然な表情を長時間続けるのは難しかった。最初に撮った1枚が掲載されたこともよくあったという。

「安室奈美恵さんのときはスタジオを飛び出して、通りで撮ったんです。『ソフトクリームを売ってるから、それを持って歩いてみて』って。ものの15分もかからないで終わりました。ブローニー(フィルム)で2本だか
ら、20カットも撮ってないですね」

 かく撮影したスターの貌は、時代を見事に物語っている。1月4日に発売する「週刊朝日」(1月15日号)では篠山さんが撮影した72表紙を厳選し、10ページに渡ってグラビアで詳報する。

(本誌・菊地武顕)

※週刊朝日  2021年1月15日号に加筆