「金融機関としての信用を生かして、終活といえばおひとりさま信託と思ってもらえるように取り組んでいきたい」(人生100年応援部長の谷口佳充さん)

 商品は「金銭信託タイプ」と「生命保険タイプ」の2通りを用意。生命保険タイプは、契約時に加入する生命保険の死亡保険金を費用に充てるため、金銭信託タイプに比べ少ない元手から始めることができる。

 みずほ信託銀行は、「プライベートデータ信託『未来への手紙』」を20年7月に始めた。医療や介護、葬儀など万が一の時に必要な個人情報約160項目を専用のサイトに登録できる。本人が亡くなったら、あらかじめ指定した推定相続人ら最大5人に通知する。

「ペットの世話やパソコンやネットサービスのパスワードなど、遺言書に書ききれない情報は意外と多い。デジタル版の貸金庫のイメージで活用してもらえれば」(信託フロンティア開発部の小尻麻未さん)

 自治体の対応も進んできた。先駆けは、神奈川県横須賀市だ。15年7月に収入や資産が少ないおひとりさま向けに、葬儀の希望や墓の所在地など「もしもの時」の希望を市に登録しておき、市が紹介する葬儀社と26万円前後で契約する「エンディングプラン・サポート事業」を始めた。18年5月には「わたしの終活登録事業」を開始。遺言の保管場所やお墓の所在地など終活情報を誰でも市に登録できる。

 同県大和市も、市役所に常駐する「終活コンシェルジュ」が、葬儀や納骨、遺品整理に関する相談に乗り、生前に契約できる葬儀会社や遺言書の作成などを請け負う専門家を紹介する。

 同市や愛知県北名古屋市、兵庫県高砂市などは、横須賀市と同じように、終活情報の登録や葬儀社の紹介といった事業を手がけている。

 自治体が支援に取り組むのは、引き取り手のない遺骨が増えたことが背景にある。東京都ではそうした「無縁仏」への対応にかかる費用がこの20年で約3倍になった。

 ほかにも、千葉市が葬儀や墓などのサービスを手がけるイオンライフ(千葉市美浜区)と連携して市民の終活相談に乗るなど、企業と手を組む例も増えてきた。

次のページ