代わって首都圏で増えたのが「ガス点検強盗」だった。多田氏は「強盗ですが、これは特殊詐欺の延長線上にある手口」という。

 強盗容疑で11月末に逮捕された男は、8月に川崎市の60代女性宅にガス点検を装い2人組で侵入。女性の両手足を粘着テープで縛って「金を出せ」と脅し、現金とキャッシュカードを奪い、ATMで現金50万円を引き出した疑い。県警によると、男はほかにも複数の強盗に関与していた疑いがもたれている。

 ガス点検強盗は夏以降、首都圏で頻発しており、都内では9月22日に世田谷区の80代夫婦宅、同23日には足立区の団地の70代男性宅で発生している。電気の検針と偽って侵入するケースもあり、手口はどれも共通している。

「2人組で来てガスの点検と偽り、ドアを開けたら粘着テープで拘束する、SNSなどを使って仲間を募るなど、マニュアルを使っている点からも詐欺グループの犯行だと考えられます」

 多田氏はこう分析したうえで、犯行グループが次々と新たな手口を編み出す理由をこう指摘する。

「コロナ禍における給付金、ドコモ口座の不正出金などのニュースに合わせて、すぐに新しい手口を考え出してきました。それがメディアで紹介されるころにはまた新しい手口を使っている」

 このコロナ禍で在宅率が高まり、出てきたのがガス点検強盗だった。

「しかし、その手口も警戒され始めてアポ電空き巣が出た。今度は外におびき出してしまえという考え方です。おそらく今もまた、新たな手口を考えているはずです」

 次々と繰り出される新手の詐欺・強盗から身を守る方法はあるのか。

 多田氏によると、電話に対しては、常に留守電にしておき、相手を確認してから出る。口座情報や家族構成などには答えないなど、まずは基本的な対策を徹底する。

 ガス点検強盗はとにかく家に上げないこと。扉を開ける前にドアチェーンをした状態で応対し、ガス会社などに確認する。追い返しても押し入られることがあるので、窓などの戸締まりも忘れないことだという。

 それでも新手の詐欺を見抜くのは難しいという。多田氏が指摘する。

「年末年始は手元にお金を置きがちなので特に注意が必要です」

 人を見たら泥棒と思えということだとしたら、いやな世の中になったものだ。(本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2021年1月1‐8日合併号