伯山:今年活躍した人を描いているかどうかっていうのも加味されるんですか。

山藤:まあ、多少は。それを大事に思う選者がいてもいいわけです。

 森喜朗さん。今年復活したものね。オリンピックの延期で。

伯山:いや、これを選ぶ山藤先生、すごいですね。

山藤:鼻と口が栓抜きみたいだ。

伯山:確かに、これ、言われてみると大賞かもしれないですね。

山藤:森さん、喜ぶだろうね。出たがり屋だったから。総理以後、出番がなかったからね(笑)。

伯山:すごくないですか、この絵。要するに、栓抜きが置いてある跡だけで、森さんを表現している。

山藤:ネガティブな意味で、僕の中では心に残る人なんです。この人が東京オリンピックに関して、どういう思いを持っているのか。コロナがあったから、開催を堂々と断れたのにね。

伯山:なるほど。

山藤 僕の主観でいくと、今年の惨状、このひどい目に遭っている日本で開催するのはぜいたくかな。

伯山:そうかー。

山藤:すぱっと断ってくれればよかった。

伯山:絵としてはどうですか。人物もそうですけど。

山藤:森さんって、ここを描けばっていうポイントはないんですよ。

伯山:これ、一応、目なんでしょうけど、異常にちっちゃいんですよね。

森下:目か口か。よくわかんない。

山藤:森さんは敷地が広い所にぽつんと家が立ってるんです。まわりに開けた所が広々とある。

伯山:不思議な絵だ。僕、わからないんですけど、プロが見ると、技術的にどういうものなんですか。

山藤:技術はまあ、どうでもいい(笑)。伯山さんのいる世界と同じで、昔の尺度のうまい下手は、今、通用しないんです。

伯山:そうですね。

山藤:むしろ、どれだけ心理的にイレギュラーであるかのほうが大事でしょう? テレビ時代って、そういうものですよね。だから、うまい下手は、あまり問いません。

伯山:なるほど。発想力とか、面白さ。

山藤:絵心があるとか、構図の捉え方がしっかりしてるとか、そういうことはどうでもいいことで。何が彼を、心を動かしたのかということのほうが、今のテレビ時代は大事なんです。

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