歯周病や虫歯を予防するには日々のケアが大事だ。歯磨きは歯の表面と歯茎の境目に歯ブラシの先をつけて、小刻みに動かすのがポイント。歯磨き粉はできれば付けないか、ほんの少量を付ける程度に。デンタルフロスや歯間ブラシ、洗口液も活用しよう。

 食べものをしっかり「噛める」こと自体、認知症予防に効果がある。2019~20年だけでも、韓国やスイス、ドイツなどで認知機能と噛む能力には相関関係があることが報告されている。

 日本咀嚼(そしゃく)学会理事長で日本歯科大学生命歯学部(東京都千代田区)歯科補綴(ほてつ)学の志賀博教授が説明する。

「まず一つは噛むことで脳の血流がよくなります。それによって脳が活性化します。もう一つは刺激。噛んだり、味わったり、食感を楽しんだりする感覚は、脳をより強く刺激してくれます」

 しっかり噛むために大事なのは、健康な歯を持つこと。定期的なケアのほか、自費で1500円ほどの咀嚼能力検査を受けるのもいいかもしれない(義歯がある人は健康保険で検査が可能)。糖を含んだグミゼリーを20秒間噛み、10ミリリットルの水を含んで吐き出す。その水に含まれる糖の量を調べることで、噛む能力が客観的にわかる。

「噛む能力は健康な歯があってこそです。日本人は欧米の人に比べて歯を残したがりますが、歯周病でグラグラしている歯を残しておくと、噛む力が発揮できません。しっかり治療をし、必要に応じて入れ歯やインプラントを入れたほうがいいと思います」(志賀教授)

 義歯も長い間使っているとだんだん摩耗し、支える歯槽骨も痩せてくる。3カ月から半年に1回は、歯科医院で義歯のメンテナンスも行いたい。(本誌・山内リカ)

週刊朝日  2020年12月25日号