しばらくすると電話口で半泣きの主催者も出てきた。「なんとか……持ちこたえてますが……(涙)」。とても「キャンセル料くれ」なんて言える雰囲気じゃない。よせばいいのにこないだ数えてみたら、2月27日から大晦日までに125公演の仕事がキャンセルになっていた。私の仕事だけで……だ。世の中のいくつの落語会が中止になったのだろうか。

 都内の寄席は4月4日から休館。自粛期間中の様子はこのコラムでも以前書いた通りだ。YouTubeの無観客配信などしてるうちに、6月1日に新宿末廣亭と浅草演芸ホール、7月1日から上野鈴本演芸場と池袋演芸場が営業を再開した。もちろん入場制限や出控えの影響かお客様は以前より少ないけども、毎日どこかで落語を喋っているじゃないか。「どっこい生きてるなぁ」と思う。

 もうすぐお正月。おっかなびっくりかもしれないけど、皆さん気が向いたら寄席にお運びください。どっこい生きてますから、落語家は。

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。YouTube 「春風亭一之輔チャンネル」ぜひご覧ください! アーカイブもいろいろあります

週刊朝日  2020年12月25日号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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