「目安として、課税所得が900万円以下の人は申告したほうがお得。上場株の配当から天引きされる税率は約15%、さらに地方税が5%かかりますから、それよりも税率の低い所得の人は税金が返ってきます。配当控除は、所定の控除額が税金から丸々引かれる『税額控除』ですので、税金の負担を減らす効果は大きい」(板倉さん)

 支出を減らすことも欠かせない。国土交通省によると、住宅ローンの返済額は平均で月8万~10万円程度。生命保険文化センターのまとめでは、生命保険料の平均は月2万~3万円ほど。負担が増えたと感じたら、住宅ローンや保険料を見直すことも考えたい。

「住宅ローンの返済が厳しいなら、借入先の金融機関と返済条件の変更を早めに相談しましょう。返済が1回でも滞ると、金融機関の心証は悪くなる」とファイナンシャルプランナーの深野康彦さん。条件変更には、返済期間を延ばしたり、一時的に利息分だけの支払いに変えたり、ボーナス払いを見直したりとさまざまだ。

 月々の負担を減らすには、金利の低いローンへの「借り換え」や「繰り上げ返済」をする手も。「借り換えを検討する場合は、利率だけでなく事務手数料も確認しましょう。せっかく利率が安くなっても、トータルで損をしては元も子もない。最近は事務手数料を定額とするなど、安く抑える金融機関も増えました。全体の支払額が少なくなるものを選ぶようにしましょう」(板倉さん)

 生命保険については、「お金をためる目的で入っている保険はこの際、思い切ってやめるのも選択肢」(深野さん)だ。医療保険やがん保険など、必要最低限の保障が期待できる商品だけに絞ることも考えたい。「会社員なら、病気やけがで休んだ場合の傷病手当など、健康保険組合の保障も充実しています。勤め先の福利厚生制度を改めて確認し、本当に必要な保険か見直しを」(同)

 もちろん長年、保険料を払っていたら解約には尻込みしがちだ。板倉さんは次のように説く。

「保険料の払い込みをやめて、保険期間は変えずに、保険金額を下げて保険を持ち続ける『払い済み保険』という方法もあります。今まで払い込んだ保険料よりも高い解約返戻金が見込めるなら、『一部解約』という選択肢もあります。いずれも手続きしだいでは損する場合もありますので“素人判断”は避け、専門家に相談するといい」

 年収減に悲観するだけでなく、自らの手でこうした対策をとってほしい。何もせずに放っておくと、損をすることが多い。困ったら最寄りの自治体の窓口や専門家らに相談し、少しでも負担をやわらげる努力をしよう。(本誌・池田正史)

週刊朝日  2020年12月25日号より抜粋

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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