※写真はイメージです (GettyImages)
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通常の医療費控除とセルフメディケーション税制 (週刊朝日2020年12月25日号より)
通常の医療費控除とセルフメディケーション税制 (週刊朝日2020年12月25日号より)

 新型コロナウイルスの影響で企業の業績が悪化し、そのしわ寄せが会社員の給料カットに及んでいる。ボーナスの大幅減などで年収は落ち込み、これまで通り働き続けられるのかさえ不透明になってきた。離れた両親を扶養にしたりと“家族構成を見直す”ことで、節税になるが、ほかにはどんな“裏ワザ”が? 手取りを増やし、支出を抑える手続きや制度を紹介したい。

【表】通常の医療費控除とセルフメディケーション税制の比較はこちら

 医療費は年10万円を超えた分は、納税額のもとになる所得から「医療費控除」として差し引ける。『知らないと大損する! 定年前後のお金の正解』(ダイヤモンド社)の著者で税理士の板倉京さんはこう呼びかける。

「注意したいのは、所得が少ない場合は10万円を超えなくても対象になる可能性がある点。所得が200万円未満なら、所得の5%を上回った分だけ控除が受けられます。『10万円』にとらわれず、その年にかかった医療費を確認してほしい」

 控除対象となる医療費は診療費や薬代、マッサージ代や通院に伴う交通費など。家計が同じなら、自分以外の家族の医療費も合算できる。とはいえ、控除対象の判断が難しく、「『治療目的』かどうかが見分けるコツ」(板倉さん)だ。

 10万円を超えることもある人間ドックや健康診断はあくまで「予防目的」なので原則、医療費控除の対象ではない。だが、「診断で重大な病気が見つかり、そのまま治療を続けた場合は対象になる。重大な病気には、がんや心疾患、高血圧、糖尿病のほか、メタボも含まれます」(同)。

 薬代が控除される制度「セルフメディケーション税制」(医療費控除の特例)もある。市販薬のうち、国が指定した「スイッチOTC医薬品」の年間の購入額が計1万2千円を超えた分が控除の対象となる。医療費控除のように10万円を超えなくてもいい。ただ、セルフメディケーション税制は、健康診断やがん検診など健康維持が前提だ。同税制と医療費控除を一緒に使えないことも踏まえよう。

 株式投資をしている人は“配当控除の申告”を検討してみてはどうか。配当にかかる所得税は、基本的に配当を受け取った時点で差し引かれるため、申告しない人が多い。この申告で税金が戻るケースがあるのだ。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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