ジャーナリストの田原総一朗氏(c)朝日新聞社
ジャーナリストの田原総一朗氏(c)朝日新聞社
イラスト/ウノ・カマキリ
イラスト/ウノ・カマキリ

 「Go To トラベル」事業の停止をはじめ、政府のコロナ対応は後手後手に回っている印象が否めない。ジャーナリストの田原総一朗氏は、根源的なガバナビリティーが欠如していると指摘。さらに、その理由を考えた。

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 12月10日、新型コロナウイルスの感染者数は全国で約3千人、東京ではついに600人超と、第3波は拡大し続けている。

 そして、北海道旭川市など、いくつもの自治体で医療崩壊が起きているにもかかわらず、感染者も死者も全国で最も多い東京が、Go To トラベルについて、65歳以上と基礎疾患のある人に自粛が求められているだけなのである。小池百合子都知事と菅義偉首相が2度も会談を重ねながら、「停止」ではなく、「自粛」なのだ。問題なのは65歳未満の世代なのに、その世代には「自粛」さえ求められていない。

 この無責任とも言える中途半端さをどう捉えればよいのだろうか。

 そもそも、安倍晋三前首相が4月に緊急事態宣言を出したとき、「Go To トラベルを始めるのは、新型コロナの感染が収束した後」だと述べていた。それを第2波が生じようとしている最中に、強引にGo To トラベルを開始したのは、観光業界と密接に関わっている二階俊博・自民党幹事長と、彼に全面的に支持されている菅官房長官(当時)だったのである。安倍首相はそれを拒めなかったのだろう、という見方が多い。

 だから菅首相はGo To トラベルにこだわっている、ということになるのか。

 だが、コロナ禍に対しては、日本政府は根源的なガバナビリティーが欠如しているのである。

 安倍首相が緊急事態宣言を出したのは、欧州各国や米国に比べて、約1カ月遅れていた。しかも、他国ではいずれも緊急事態時に罰則規定があり、違反すれば罰金を取られたり、逮捕されたりするのに、日本には罰則規定というものがない。言ってみれば、緊急事態とはいえ、現実には自粛要請なのである。

 なぜ、緊急事態宣言が欧州各国や米国に比べて約1カ月も遅れたのか。

 安倍首相の中途半端な宣言について、その後調べてわかったのは、実は、この国は憲法で緊急事態というものを認めていない。だから、緊急事態宣言が罰則規定のない自粛要請でしかないのだ。

 はっきり言えば、現在の憲法は敗戦の翌年に、日本を占領していた米国が押し付けたものである。

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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