子どもの教育への影響は、年収が400万円未満の世帯では、3割余りがパソコンやタブレット端末を持っていないと回答。一人親世帯も約3割が持っておらず、ICTの格差が所得によって大きく開いていた。

 コロナによる臨時休校や、保護者の所得の減少の影響を受け、子どもの生涯所得がどうなるかも試算した。現状を放置すると、臨時休校の影響で子ども1人当たり110万円程度の生涯所得が減る。低所得世帯は雇用の影響も上乗せされ、200万円未満が167万円、200万~400万円未満が146万円の生涯所得が減るという推計だ。

 同社の経済政策部の小林庸平・主任研究員は「経済格差と学力の相関はコロナ前から生じていたが、臨時休校によって格差拡大に拍車がかかった」と指摘。「現在のオンライン教育は対面授業の代替手段にはなっておらず、ソフト面での支援も重要だ」としている。

 行政は実態をどう把握しているのか。文科省は「学びの保障」総合対策パッケージで、教師が「学びの保障」に集中できるよう、学校向け調査を一部見送る方針を示した。都道府県も限られた自治体しか、子どもたちの学びの現状を調べていない。これについて松岡准教授は「長期間の休校中の子どもの学びの把握は、教育行政にとって欠かせない。現状を把握せずして改善はない」と指摘。政府の教育再生実行会議のワーキング・グループでも「データなしの判断は、医師が診察・血液検査などをせずに病名を特定するようなもの」と訴えた。(朝日新聞編集委員・氏岡真弓)

週刊朝日  2020年12月25日号より抜粋