「子どもたちは全員、力がある。大人がきちんとした環境を整えられれば、困難を乗り越えて育っていける」とも宇地原さんは話す。

 子どもたちの教育格差は、調査でも浮かび上がっている。

 子どものオンライン教育の機会について分析したのは、法政大の多喜弘文准教授と、早稲田大の松岡亮二准教授だ。

 全自治体で緊急事態宣言が解除された5月25日から6月5日、内閣府が全国の15歳以上の1万人余りを調査したうちで、末子が小中高校、高専生の1274人のデータを分析した。

 その結果、学校から授業やメールでの学習指導などのオンライン教育を受けていたのは、例えば子どもが中学生の場合、年間収入が600万円以上の世帯が約4割に対して、600万円未満の世帯は約2割と半分ほどだった。塾や習い事など学校外でオンライン教育を受けていたのも、それぞれ約36%と約20%、いずれのオンライン教育も受けていない割合は約34%と約55%。子どもが小学生や高校生の場合も開きがあった。

 多喜、松岡両准教授は「世帯収入など子どもが変えられない『生まれ』で、学校外だけでなく学校によるオンライン教育の機会に差があった」と言う。そして教育行政に対し、「実態を把握したうえでデジタル環境の整備だけでなく、不利な子どもの学習機会を保障する対策を実施すべきだ」と話す。

 また、三菱UFJリサーチ&コンサルティングは6月8~12日、インターネットで小学生から高校生の子どもがいる2千世帯を調べた。

 コロナの感染が広がった2月以降に離職や転職をしたか聞いたところ、男性の非正規社員のうち26.2%が離職・転職したと回答。正社員や役員(3.4%)の約8倍だった。女性の非正規社員は15.2%で正社員や役員(7.2%)の倍以上だった。

 今年1月から5月の世帯月収が減少したと答えたのは、年収200万円未満では16.4%だったのに対し、年収1千万円以上の人は1割未満と所得の低い人ほど収入が減った人が多かった。

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