「『それなら西洋医学的ではない、自分が気に入った治療だけどんどんチャレンジして必ず克服するぞ』と、がぜんやる気が出てきました。中途半端に夢や希望を持たされたら、色々と考えて気持ちが切り替わらない。私にとっては大正解でした」

 それ以来、漢方をはじめ、ヨウ素剤、サプリメント、ワクチンなど手当たり次第に試した。怪しげな民間療法や、自称・超能力者の元にも通ったという。

 そうした話を聞きながら、筆者の脳裏に浮かんだのは、あれだけ吹聴された自身の霊能力で、がんは克服できなかったのか? という疑問だ。それにはこう即答した。

「無理ですね。私の場合、何かの霊が取りついたわけじゃあないんです。因果? それもわかりません。わかってたら、こんなに苦労はしないですよ。アハハハ」

 それでも昨年までは小康状態が続き、1年前の19年12月からはYouTubeチャンネル「織田無道ワールド」を始めた。

 しかし、年が明けるとガクッと体調が崩れ始めた。

 筆者が今年5月、東京・秋葉原のファミリーレストランで会った際はこう語っていた。

「本当に参りました。食が細くなりましたねえ。酒も全然ダメ。飲みたいって思わないもん。好きだったビールも、誰かに注がれたら申し訳ないからコップに口はつけるけど、ここ半年以上、のどを通したことはないなあ」

 この時はかなりやせており、血色はそれほど悪くは見えなかったが、声にハリはなかった。テレビに出ているころは、酒や肉が大好きで有名だった織田さんとは思えない発言だった。

 織田さんといえば、霊能ブームに沸いた90年代、「週に10本のテレビ番組に出ていた」(織田さん)という。たしかに当時、テレビで織田さんを見ない日はなかった。人気絶頂時でもあり、僧侶らしからぬ豪遊が話題になった。

「テレビの特番に何本か出演して、振り込まれたギャラが1千万円なんてざら。それを銀座とか六本木のクラブやキャバクラでひと晩で飲み切っちゃった」

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霊能者でのブレークは宮尾すすむさんがきっかけ