日本ハムの斎藤佑樹=代表撮影(C)朝日新聞社
日本ハムの斎藤佑樹=代表撮影(C)朝日新聞社
7日の合同トライアウトで左前適時打を放ち、跳び上がって喜ぶ新庄剛志氏(C)朝日新聞社
7日の合同トライアウトで左前適時打を放ち、跳び上がって喜ぶ新庄剛志氏(C)朝日新聞社

 佑ちゃんの「最後の切り札」はサイドスロー転向? 日本ハム・斎藤佑樹は右ひじ靱帯(じんたい)損傷の影響もあり、プロ10年目の今季は1軍登板なしに終わった。3年連続未勝利の32歳右腕と契約を結んだ日本ハムに疑問の声が多い。しかも、万全の肉体で巻き返しを狙う状況ではない。右ひじの治療のため、自身の血液から血小板を取り出し、患部に注射する再生療法「PRP療法」を終え、リハビリからのスタートになる。

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 スポーツ紙の遊軍記者は、斎藤が来季も1軍のマウンドに立つのは厳しいと分析する。

「右ひじの故障が完治しても、ファームで抑えるのもままならないでしょう。直球が走らないので、変化球も簡単に見逃される。制球も良いほうではないのでカウントが不利になり、甘くなった球を痛打されるパターンが多い。投球フォームを大学時代に戻すなど試行錯誤していましたが、根本的に投球スタイルを変えないと厳しいと思います」

 起死回生のフォーム改造。アマチュア時代から斎藤を見てきた別のスポーツ紙記者もこの意見に同調する。そして、提案したのはサイドスローへの転向だ。

「早実(東京・早稲田実高)で3年夏に全国制覇した時は軸足の蹴りが強く、腰の回転速度も速かったので、投げ終わった勢いで一塁方向に体が流れていましたが、今は完全に逆です。軸足の蹴りが弱く、打者に正対するのが早いので躍動感がない。腰の回転も遅く右肩を無理やり持ち上げて投げている感じがします。下半身から連動して上半身に力が伝わる投げ方に戻すために、腰が縦回転のオーバースローから横回転のサイドスローにしてボールに力が伝わる感覚を取り戻したほうがいい」

 高3夏に甲子園で「ハンカチ王子」と社会現象になるフィーバーを起こした。早大で東京六大学リーグ史上6人目の通算30勝、300奪三振を達成し、ドラフト1位で日本ハムに入団してから10年の月日が経った。新人の年に6勝を挙げたのが自己最多。プロでは目立った成績を残せず、ファーム暮らしが長く続く中で、近年は「戦力外になるか」が話題になるという寂しい状況が続いている。

 斎藤がつけている背番号「1」は違う形で注目を浴びた。元日本ハムOBの新庄剛志氏が今月7日に神宮球場で開催された12球団合同トライアウトに参加。現役時代につけた背番号1の日本ハムのユニフォームを身にまとい、左前適時打を放つなど48歳とは思えぬハツラツとした動きで話題を独占した。14年間のブランクを考えると現役復帰に手を差し伸べる球団が現れる可能性は低い。だが、日本ハムファンからは、こんな声が上がる。

「戦力として厳しいというなら斎藤も同じ。それなら、新庄のほうが斎藤よりチームに大きなプラスアルファをもたらす。外野の守備は若手の良いお手本になるし、何よりあの年齢で不可能を可能にしようとする姿を応援したくなる」

「新庄待望論」が起こるのは華やかさだけでなく、球界屈指の外野の守備力、チャンスに強い劇的な一打が多かったなど、グラウンドで力を証明してきたからだ。実力のない選手は淘汰されていく厳しい世界で、斎藤が周囲の批判を封じ込めるには結果で証明するしかない。(牧忠則)

※週刊朝日オンライン限定記事