「学生は自分だけで悩みを抱えがちですが、他の学生の質問に耳を傾けることで、『悩んでいるのは自分だけではない』と発見がある。われわれも学生の悩みを把握するきっかけになる。お互いに意思疎通を図る機会になりました」

 ただ、同大で就職志望者が多い日本航空や全日本空輸、エイチ・アイ・エスが5~7月に新規採用の中断・中止を発表したため、学生は対応に追われた。就職キャリア支援事務室の原口善信さんは、こう話す。

「航空・観光業界を第1志望としていた学生の心理的ダメージは大きかったです。ホテルなど近い業界に志望先を変更したり、別の業界の志望に転じたりと、その後の対応は人によってさまざまでした」

 早稲田大学は3月に対面で開く予定だった合同企業説明会を中止し、8、9月にオンライン方式で行った。キャリアセンター課長の塩月恭さんは、こう語る。

「オンラインにより、距離のハードルがなくなり参加しやすくなりました。企業は他社の取り組みを知ることができ、学生はチャットでの質疑応答がしやすくなるなど、双方の満足度が高まったという感触を得ました」

 同大では、今年度も各方面にまんべんなく就職が決まった。特に就職者が多いのは情報通信や専門サービス(コンサルティング)業界。塩月さんが説明する。

「レジャー・旅行などのサービス業界は、新型コロナウイルスの感染動向に大きな影響を受けました。その分、今年度はIT・情報通信分野などに学生が流れる傾向がありました」

 立命館大学では2月末に就職活動応援特設サイトを立ち上げ、最新の支援情報を学生に提供。現在は対面に加え、オンラインやメールでも学生からの相談を受け付け、ウェブ企業説明会や支援企画も随時開催している。キャリアセンター次長の東美江さんは言う。

「今年度は学生に随時アンケートしながら、その声を支援に反映させ、オンライントークルームなど学生を孤立させない体制構築に努めました」

 同大は理系就職では製造業や建設業、情報産業など、文系就職ではサービス・製造業、流通・商事、金融業などが人気。今年は、例年よりも情報通信産業などIT関連分野への進出が多く、留学生にも同様の傾向がみられた。東さんは、こう話す。

「(コロナ禍による)採用動向の変化を受け、学生の就職先も変化するでしょう。今後は、ある商品が消費者の手に届くまでのサプライチェーンを理解するイベントやOB・OGとの交流企画などにより、学生に視野を広げてもらいたいと思います」

(本誌・松岡瑛理)

週刊朝日  2020年12月18日号より抜粋