安藤:ネット上の意見も確かに一つの意見なんだけど、本来なら生の声の取材をすべきなんですよ。「ネット上でこう言われている」という紹介は、生の声の取材を怠けている証しだと思います。

林:そのとおり。そういうの聞いてて、イライラします?

安藤:すんごくイライラしますよ(笑)。

林:安藤さんって、ほんとは現場に行きたいんですもんね。

安藤:はい。私は現場にいれば幸せというタイプ。ここはちゃんと言ったほうがいいと思うんですけど、アメリカの大統領選のとき、PBSのおばあちゃまキャスターが、各地に散らばっている生きのいい記者たちに、「どうなってるの?」「どうなってるの?」って問うて問うて問い詰めるんですよ。私、あれがやりたいと思ったんです。問い詰めちゃいたい(笑)。私も、ニュースをやってるときに、出先の記者のリポートだけでは見てる人たちは何だかわからないと思うから、「それはどういうことですか?」って追加で聞くわけですよ。そうすると「意地悪女」って言われるんです。

林:女性が権力を持つと、問うたことが相手を窮地に陥れる構図に見えちゃうんじゃないですかね。

安藤:でも、「どうして?」って問うことが私たちの仕事じゃないですか。問うことをやめたらジャーナリズムは負けですよ。無関心でいるほうが罪が深い。だから私はこれからも問うことをしたいと強く思ってるんです。

(構成/本誌・松岡かすみ 編集協力/一木俊雄)

安藤優子(あんどう・ゆうこ)/1958年、千葉県生まれ。大学在学中からキャスターやリポーターとして報道番組に携わる。「FNNスーパータイム」「ニュースJAPAN」「FNNスーパーニュース」のメインキャスターとして活躍。2015年から今年9月まで、午後の生放送番組「直撃LIVE グッディ!」のメインキャスターを務めた。著書に『以上、現場からでした。』(マガジンハウス)、『ひるまない』(講談社)など。

週刊朝日  2020年12月18日号より抜粋

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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