林:安藤さんは、朝起きると海外のニュースを全部チェックしてるんでしょう? ジャーナリストと名乗る人はそういうことをしなきゃダメですよね。

安藤:チェックと言っても、ザッピング(リモコンでの頻繁なチャンネル替え)ですよ。CNN、BBC、FOX……。このあいだのアメリカの大統領選の最中、ずっとアメリカのメディアばっかり見てたんですけど、PBSのニュースを見てたら、ずっと昔から出ているおばあちゃまのメインアンカーがいて、美しいんだけどキツくてコワいんです。私は彼女に見入っちゃって、なんで日本はこんなふうに年をとってもなお、メインでやれないのかなと思いましたね。

林:たしかにそうですよね。私、覚えてますけど、オバマさんの大統領選挙のとき、安藤さん、現地に行きましたよね。

安藤:はい、ニューヨークにいました。

林:あのとき安藤さんにしてはめずらしく感情が高ぶって、涙ぐんで「いつか私たちの国も、こんなふうに自分たちがトップを直接選べるような国になってほしい」とおっしゃってましたよね。

安藤:オバマさんが黒人で初めての大統領になって、自分たちが選んだことに対する誇りみたいなものが伝わってきて、それで泣けてきたんですよね。日本は議院内閣制だから、自民党の総裁選に手出しのしようがないわけですよね。自分たちの国を引っ張っていくリーダーを、自分たちが選んだことにあれだけ素直に喜ぶということを、一度でいいから経験してみたいなと思ってうらやましかった。

林:フジテレビのキャスターをおやめになるころ、新型コロナというのが登場してきましたね。どうしようもないものをどう料理していくのかが、腕の見せどころだったわけですよね。

安藤:最初、新型コロナウイルスだってわかったとき、私たちはほとんど無知な状態でしたよね。専門家ですらよくわからなくて、いろんな専門家をとっかえひっかえ番組に呼んでるうちに、「こんなの大したことないよ。インフルエンザみたいなもんだ」と言う人から、「治療薬もワクチンもないし致死率も高い。これは大変なことだ」という見方の先生まで情報が入り乱れて、どちらが本当のファクトに基づくかというそのファクトがわからない。だから相づちを打つにしても、そのタイミングもすごく神経を使いました。

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