対症療法にすぎないことが分かっていても出撃するのは、集落に深い愛情を持っているからだ。

 伊井さんが興味深いことを話してくれた。

 猿はショウガ、トウガラシ、ピーマン、シソなど臭いのきついものは食べないという。そこで、臭いのきつい野菜を中心に作ろうかと考えることもあるという。

「このあたりに住んでいるのは、だいたいが、私らの年代です。猿に荒らされると、畑を続ける気持ちがなくなってしまいます。作らないと、畑はすぐに荒地になってしまう。荒地にしてしまうくらいなら、猿が嫌うものだけでも作ろうかと思います」(伊井さん)

 石村さんが続ける。

「都会に出た子どもたちに採れたての野菜を送るとね、孫が喜んで『美味しかった』と連絡をくれるんですよ。畑があれば、長男も定年になったらこっちに帰って来ようと思うでしょう。でも荒地にしてしまったら、戻る気がなくなってしまう。どこの家でもそういう風になったら、集落がなくなってしまう」

 住民は野菜作りに生きがいを感じると同時に、次世代への想いも込めているのだ。

 35世帯の集落を守るため、モンキーバスターズは今日も出撃する。
(本誌・菊地武顕)

※週刊朝日オンライン限定記事