しかし、父の死後、「母を安心させるためにも、この街でずっと生きていくか」「鬱屈(うっくつ)とした日々のすべてを変えるために東京に行くか」という葛藤があって。そして、「自分には自分の人生がある。自分のために生きたい」と、その想いを確認するためにも東京に行くしかないと思ったんですね。

──アルバム発売は12月8日。街は例年、クリスマスムードの時期です。

 僕自身、素直じゃなくひねくれたところがあるので、子どものころからクリスマスをみんなが楽しみにしてるのが不思議だったんですよね(笑)。最近のクリスマスイブは毎年ライブをしていたので、ほとんどステージの上にいました。

 その日に開催するライブは毎年女性限定ライブとさせていただいているのですが、僕のようなクリスマスを素直に楽しめない人、一人のクリスマスが寂しい人、もちろんご家族のいらっしゃる方にも、この日は僕から最大限のおもてなしをさせていただきたいという想いで開催してきました。今年はそれができなくて残念ですが、また来年のクリスマス、寄り添うことができたら。

──プライベートについてですが、かつてご自身のラジオ番組で、ネイルクリームをしていると語っていらっしゃいました。

 ギターを弾くこともあって、爪への栄養剤として、ネイルクリームを塗っています。あと、女性はよく指を見るっていうじゃないですか。だったら指や爪はきれいにしておかないと、と(笑)。

──そのようなクリームなども含め、お気に入りや落ち着く香りはあるのでしょうか。

 クスノキの香りが好きなんです。

 長崎に今も生きる被爆樹木、クスノキの成長を促すために毎年行われている剪定(せんてい)時に出てくる廃材を、縁があって長崎市の方にわけていただいたのですが、ものすごくいい香りがするんですよ。その香りがすごく好きですね。僕は被爆二世なのですが、それをラジオで何の気なしに話したら、「福山雅治、被爆二世を告白!」とネットニュースになって。そんなことがニュースにされてしまうことに違和感を覚えて、“被爆”という言葉だけが独り歩きしていく、その違和感をなくしたいという思いもあって「クスノキ」という曲を描いたんです。

──最後に読者へのメッセージをお願いします。

 クスノキと同じように、前の世代からつないできた命のバトンを受け取って、エンターテインメントという仕事の中で生と死について表現することで、誰かの何かのお役に立てたらと思っています。読者の皆さま、どうかいつまでもお元気で、「週刊朝日」を毎週読んで、平和をともに願いましょう。元気に毎日を楽しんでいきましょう!!

(構成/本誌・太田サトル)

週刊朝日  2020年12月11日号