おなかにゼリーを塗られて、グリグリやられるあれ。エコー検査ってやつ。あれもいい。妙に温かいゼリー。イイネ。そしてグリグリ棒(プローブというらしい)で、腹の中を隈なく「家探し」される感じがたまらない。まるで熟練の空き巣が入ってきたかのごとく。「痛かったら言ってください」と言われ、肋骨をゴリゴリ擦られるくだりがクライマックスだ。「い……」と漏らすも決して「痛いです」とは言わない。「はい、終了。ご自分でお拭きくださいー」とほったらかしにされて、ウェットティッシュでそそくさとゼリーを拭う。急かされてないけど、一秒でも早く退散せねば……というあのひと時はなんとも刺激的です。

 もっと言えば、受付で待っているとき「みんな自身の便と尿をカバンに入れてるんだな……」と見渡しながら感慨に耽る瞬間もたまらない。

『健康診断』って、いいよね。

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。YouTube 「春風亭一之輔チャンネル」ぜひご覧ください! アーカイブもいろいろあります

週刊朝日  2020年12月11日号

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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