石井:「日曜劇場」で何本もやってますけど、原稿をいただくのが大変でした。お宅にうかがうと、「ねえ、おなかすいてない?」とおっしゃるんです。私が黙ってると、「すいてるでしょ」と言ってごはんを食べさせられて、しばらくすると「下町の話を聞かせてよ」って言うので、私、下町育ちなので下町の話をして、なんだかんだで夜中になっちゃって、「じゃあ」と言ってうちに帰ってきて、「あ、やられた。原稿を催促に行ったのに」(笑)。

林:橋田先生は早くいただけるんですか。

石井:早いです、わりと。セリフが長いから、早くもらわないと俳優さんが覚えられない。

林:先生はこれまでいろんな女優さんを見てこられて、どなたがいちばん印象に残ってますか。

石井:私、新東宝にいたので、香川京子さんとわりあいお付き合いしていて、今でもお付き合いしてますけど、きちっとしてらっしゃる方ですよね。

林:香川京子さんって品があってきれいな方で、たしか読売新聞の方と結婚なさって、ニューヨークにいらしたんですよね。

石井:ええ。私、一度ニューヨークまで行きました。あと、私はジョージ・チャキリスと佐久間良子さんの舞台の演出を日比谷の宝塚劇場でやって……。

林:えっ、あの「ウエスト・サイド物語」(61年)のジョージ・チャキリスと佐久間良子さんが? 何というお芝居なんですか。

石井:「白蝶記」(79年)という舞台で、佐久間さんが女郎、ジョージがお客の役で、佐久間さんをだんだん好きになっていくんですけど、稽古中、二人で向かい合ってると、いきなり抱こうとするんです。「ちょっと待って。だんだん好きになるんだから、すぐ抱こうとするのは困る」と言ったら、考えて、「トゥモロー」と言って帰っちゃったんです。

林:まあ、ジョージったら(笑)。

石井:次もまたダメで、「トゥモロー」と言って帰っちゃって、4回目「トゥモロー」と言ったところで、私は「ノー! ステイ!」と言って怒ったんです。そしたらジョージが私のこと「コワい」って言ったの(笑)。それから何だかんだ、長い付き合いが続いています。

次のページ