石井ふく子さん(右)と林真理子さん (撮影/写真部・小黒冴夏)
石井ふく子さん(右)と林真理子さん (撮影/写真部・小黒冴夏)
石井ふく子(撮影/写真部・小黒冴夏)
石井ふく子(撮影/写真部・小黒冴夏)

「渡る世間は鬼ばかり」をはじめ、多くの名作を生み出してきた石井ふく子さん。作家・林真理子さんとの対談で、俳優のキャスティングや大物作家たちとのエピソードを明かしました。

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【前編/「渡鬼」新作ではコロナ描く…94歳現役・石井ふく子「あんまり深刻にはしない」】より続く

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林:私、週刊誌で連載されていた先生のエッセー、楽しみに読ませていただきましたけど、水前寺清子さんを「ありがとう」(70~75年)のヒロインに口説くために、TBSのトイレで待ち伏せしてたエピソード、おもしろかったです。

石井:ほかのキャスティングは全部決めてたんです。でも、主役が見つからなくて探してるときに、友達のディレクターに用事があってサブ(副調整室)に行って、ふと下のスタジオを見たら、すごくチャーミングな子が司会をしてたの。「あの人、誰?」って聞いたら、水前寺清子さんだって言うんです。

林:当時、超人気者ですよね。

石井:私、知らなかったんですよ、ドラマばっかりやってるんで。「紹介して」と言ったら、「とんでもないです。歌一本ですごく忙しい人です」って言うの。どうしたらいいかなと思って、スタジオの扉に貼ってある収録のスケジュール表を見たら、休み時間が書いてあったんです。ここで必ずトイレに行くだろうと思って、彼女がトイレに入るのを待ってお話ししたら「歌だけやりたい」って言われて、それから4週間4回、収録のたびにトイレで待ち伏せしたんです。

林:ほかの女優さんではダメだったんですか。

石井:ふつうの女優さんじゃおもしろくないと思ったので。

林:石坂浩二さんの恋人役ですよね。私は石坂さんがハンサムすぎるように、子どもごころに思ってましたけど、そこがよかったんですかね。

石井:そうですね。あるとき舞台を見に行ったら、何もしゃべらない役でしたが、目がとってもきれいな男の子がいて。それで楽屋に呼んでもらって、「テレビに出ませんか」という話をして、名刺を渡したんです。

林:石坂浩二さんの「石坂」は、先生の「石井」から一字取ったんだそうですね。

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