石井:「肝っ玉かあさん」も「ありがとう」もそうですけど、女手一つみたいな核家族のドラマが多かったので、両親がちゃんとそろっていて、お父さんは会社員で、というふつうの家庭のドラマをやりたいなと思って橋田さんといろいろ話をしたんです。きょうだいは何人にするかも話し合って、男の子はお嫁さんをもらうと向こうへ行っちゃうから、女の子だけにしようと言って娘5人にして。

林:タイトルは?

石井:いろいろ考えて、「渡る世間に鬼はなし」という諺があるけど、相手のことを鬼だと思う自分がすでに鬼なんだ、だから鬼ばかりにしようということで、「鬼ばかり」というタイトルになったんです。

林:キャスティングもほとんど石井先生ですか。

石井:はい。長女は誰にするかとか、いろいろ考えました。

(構成/本誌・松岡かすみ 編集協力/一木俊雄)

 石井ふく子(いしい・ふくこ)/1926年、東京生まれ。父は新派の俳優、伊志井寛。母は元芸者で小唄の家元となった三升延。50年、日本電建に入社し、宣伝部に配属。61年、TBSにプロデューサーとして入社。「東芝日曜劇場」を皮切りに、「肝っ玉かあさん」「ありがとう」「渡る世間は鬼ばかり」など数々のドラマをヒットさせた。68年から舞台演出も手掛けるように。著書多数。演出を手掛ける朗読劇「女の決闘」(新橋演舞場)が12月13日に上演予定。

>>【後編/水前寺清子を口説くため「トイレで4回」待ち伏せも 石井ふく子の仰天秘話】へ続く

週刊朝日  2020年12月11日号より抜粋