しかも、検査で陽性になれば、自宅に帰ることもできず、そのまま入院となり、病気が悪化すれば人工呼吸器が必要になる。そのまま最期を迎える人もいる。家族も患者に会えないままだ。

「『ちゃんとご飯は食べていますよ』と話していたおばあちゃんが、次の日には人工呼吸器が必要になり、亡くなってしまう。この病気じゃなかったら家族に会えていたでしょうし、もっといろいろなことができたと思う。無力感しかありません」

 こうした看護師らのメンタルを支える取り組みを、4月から実施しているのが、東京医科歯科大学病院(東京都文京区)だ。

 精神科や緩和ケア科、看護部、保健管理センターの医師や看護師からなるメンタルヘルスケアチームは、まず病院で仕事をするすべての職員、スタッフ約600人に面談を実施。その後も心身に不調を訴えるスタッフに対し、精神科医らがサポートを行っている。チームをまとめる精神科准教授の杉原玄一医師は、

「(最初に感染拡大した)あの時期は、使命感や責任感がなければ逃げ出したい環境。そこに立ち向かっていったスタッフは、強いストレスにさらされていました。一方で、この状況をみんなで乗り越えようという団結力のようなものがあったように思います」

 逆に、感染者数が落ち着いてきた夏ごろは、最初のころのような緊張感がなくなり、気力が湧かないような状態に変わってきたという。第3波で一度緩めた緊張の糸をもう一度、締め直さなければならない。「そうした気持ちの立て直しをできるかどうかが鍵」だと杉原さんは言う。

 全国で感染者数が過去最多を更新し続け、中等症や重症の患者も増えている。厚生労働省のまとめでは、病床数の逼迫(ひっぱく)の程度を示す「病床の使用率」は、11月18日現在、全国の14都道府県で20%を超えた。ただ、病床数自体は余裕があっても使えないという病院もある。前出の看護師のKさんはこう話す。

「コロナ病床が逼迫しているといいますが、うちの場合はコロナの影響で患者さんの受診控えが続いていて、病床自体は空きがあるんです。でもコロナに感染した患者さんを受け持つ、看護師らスタッフが不足しているからそこを使えないんです」

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