「小遣い帳程度の簡易な帳簿でも10万円の控除は受けられます。10万円の控除でも税金は最大5万円程度安くなる。複雑な帳簿がいらない白色申告でも、この程度の帳簿は必要です。絶対に青色申告がお得」(同)

 青色申告をすれば、赤字を3年間繰り越すこともできる。赤字の額の分だけ次の年以降に事業で得られた黒字から差し引くことができるのだ。板倉さんは、「特に事業を始めたばかりの頃に大きなメリットがある」と言う。

「事業開始当初は、必要な設備や資材をそろえて赤字になりやすい。青色申告をすると、がんばって次の年に黒字になった時に赤字の分を差し引くことができます。白色申告だと、その年の黒字をもとに次の年に払う税金が計算されてしまいます」(同)

 定年後にアパートやマンションの経営を考えている人はぜひ検討しよう。建物の新設や修繕などで初期投資がかさみやすいからだ。

 もう一つ、大きなメリットが、仕事に必要な「経費」をより計上しやすくなることだ。

「白色申告でももちろん、経費は計上できます。でも青色申告はもっと有利。まず高額な備品等を買った場合に、30万円未満までなら一括で経費にできます」

 白色申告の場合は10万円以上の備品は一括で経費にできずに、減価償却という形で数年に分けて計上する必要がある。一括で経費として計算できれば、その年の所得をより多く減らせる。

 家族への給料も、青色申告だと給料の全額が経費として認められる。白色申告にも「専従者控除」という制度があるが、最大86万円までしか認められないので青色申告のほうがずっとお得だ。

 ただし、家族が働き始めた日から2カ月以内に税務署への届け出が必要なので、忘れないように注意したい。

 前出の板倉さんは、独立して事業を行う場合におススメの節税方法として真っ先に思い浮かぶのが「小規模企業共済制度」だという。

 会社員として働いてきた人には耳慣れないかもしれない。一言で言うと、個人事業主や零細企業の役員のために用意された退職金制度だ。個人事業主は、廃業したり退職したりする場合の備えがない。自分で蓄える必要がある。そこで、毎月積み立てて、退職金を作る手伝いをしてくれるのが、この制度だ。

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