昨年4月の「桜を見る会」であいさつする安倍晋三首相(当時)=代表撮影 (c)朝日新聞社
昨年4月の「桜を見る会」であいさつする安倍晋三首相(当時)=代表撮影 (c)朝日新聞社

 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」の前日に都内ホテルで主催した前夜祭を巡り、安倍氏の公設第1秘書らが東京地検特捜部から事情聴取を受けていたことがわかった。

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 安倍氏側は、昨年までの5年間で開催費用の不足分約916万円を補填(ほてん)したという。さらに、ホテル側は安倍氏が代表を務める資金管理団体「晋和会」の宛名で領収書を発行したが、領収書は廃棄された疑いもある。野党関係者はこう解説する。

「昨年11月に桜を見る会が国会で問題になった時、安倍氏は聞かれてもいないのに前夜祭について『(出席者の)各個人が直接ホテルに会費を払い込みをしている』と答弁した。この時から前夜祭の費用を補填していたことが公職選挙法や政治資金規正法に違反すると認識していたのではないか」

 だが、捜査の手が安倍氏まで伸びるかはわからない。捜査関係者は言う。

「現時点では、安倍氏本人が前夜祭の費用の不足分を補填するよう指示した証拠はない。安倍氏の起訴は難しいだろう」

 安倍氏を守るための準備も着々と進んでいる。

 安倍氏は過去の国会で「事務所側が補填した事実はない」と繰り返し答弁していた。野党からは虚偽答弁だと批判されているが、「秘書が間違った事実を安倍氏に伝えたというシナリオで乗り切ろうとしている」(前出の野党関係者)。

 現在、野党は安倍氏の国会での証人喚問を求めている。これも与党幹部は「司法当局は捜査について公式に認めていない。マスコミ報道を元に国会で議論はしない」と応じない構えだ。

 ただ、今回の疑惑ではまだ明らかになっていないこともある。領収書があっても実際に晋和会が支出していたことを示す資料がなければ、本当に晋和会の資金だったかはわからない。安倍氏らを告発した「『桜を見る会』を追及する法律家の会」の世話人を務める泉澤章弁護士は、こう話す。

「900万円以上の現金がどこから支出されたか。仮に安倍氏のポケットマネーであれば不足費用の補填に安倍氏の関与があったことになる。安倍事務所が支出していたなら、隠し口座があったという疑惑につながる。今後の焦点は、特捜部が資金の出所まで捜査に踏み込むかです」

 真実は明らかになるのか。(本誌・西岡千史)

週刊朝日  2020年12月11日号