「保険は基本的に、何かあった場合にお金がもらえる金融商品。お金のこと以外は何もしてくれない。つまり、自分でお金の問題を解決できそうなことだったら、入る必要はない。反対に、自分一人で対応が難しいケースへの備えとしては有効。めったには起こらないけれど、そのめったなことが起きた場合に経済的な損失が大きいケースが当てはまります。そう考えると、自分にとって、どんな保険が必要かが見えてくるはず」

 例えば、医療保険。医療面では手厚い社会保障制度が整備されている。

 病気やけがで病院に行けば、治療や入院にかかる自己負担は年齢などに応じて1~3割で済む。症状が重く、医療費がかさんだ場合も、高額療養費制度が適用され、1カ月の自己負担額は一定額に抑えられる。

「ある程度の蓄えがある人は医療保険に入る必要はありません。最近は国が入院期間を短くする政策を進めていて、厚生労働省によると2020年3月時点の入院期間の平均は27・9日。入院日数に応じてもらえる医療保険の給付金はそれだけ限られます。1カ月入院しても、30万円くらいの蓄えがあれば賄える。60日超の長期入院に対応する保険は少ない。その保障のために、毎月保険料を払い続けるのはもったいない」(長尾さん)

 5日以上といった一定期間、入院しないと給付金がもらえないタイプの医療保険は多い。日帰りや1日だけの入院では給付金は出ない。内視鏡手術などは数日で退院できるから、手術が必要になっても、支払いの対象にならないケースがある。

 ただし、同じ医療保険でもがん保険は加入を検討すべきだと長尾さん。

「医療費への備えというよりは、生活費の備えとして有効です。がんになっても、高額療養費制度で治療費の自己負担分は抑えられますが、抗がん剤治療などで治療が長引いた場合、従来どおりに働くのが難しくなり、生活が厳しくなってしまうからです」

 最近はこうしたケースを想定したものも目立つ。FWD富士生命の「FWDがんベスト・ゴールド」は、がんと診断されたら一時金が出る。チューリッヒ生命の「終身ガン治療保険プレミアムDX」は、長期の治療や副作用が心配される放射線治療や抗がん剤、ホルモン治療への保障もカバーする。SBI損害保険のがん保険や、セコム損害保険の「自由診療保険メディコム」など、公費で対応しない先進治療や自由診療を保障するタイプもある。

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