林:そうですよね。救いといえば救いですよね。私も、せっかく買ったチケットを払い戻しするときは「え~っ、どうして?」って思いましたよ。だからうれしいです、お芝居がだんだん戻ってきて。

浅野:この夏、川平慈英君とシルビア・グラブさんの二人で、三谷さんの「ショーガール」をやってたんですよ。

林:へぇ~、それは知らなかったです。

浅野:僕、見る機会があって夜の部に行ったんですけど、パッと明かりが入って音楽が鳴ったとたんにブァーッと出てきちゃって。

林:涙が?

浅野:ええ。3月から芝居を見てなかったんですけど、お客さんが感じるものってこういうものなんだなと思いました。

林:私も歌舞伎の幕が久しぶりに上がったときに見に行ったんですが、一緒に行った友達泣いてましたよ。「また見られてよかった」って。

浅野:今年のシーズンの幕開けに、僕、三谷さん演出で「大地」というのをPARCO劇場でやったんですけど、音楽もかかっていない客席にお客さんが静かに入ってきて、1人おきに座って、水を打ったようにシーンとしてるんです。すごい緊張感で、その緊張感をこっちももらっちゃう感じが最初はちょっとありましたね。

林:あれは三谷さんが考え抜いて、これだけ空いてりゃいいだろう、という感じでコロナ禍を逆手にとったんですよね。私は行けなかったんですけど、写真を見ると俳優さんがすごく離れて演技したみたいですね。

浅野:自分のテリトリーみたいな枠からなるべく出ないような芝居になってました。僕、近寄っていって手を差し延べかかったときがあって、「あ、ダメだ」と思ってスッと手を引っ込めました、わからないように(笑)。

林:舞台上のソーシャルディスタンスは大変ですよね。セリフにも工夫があったんですか。

浅野:ふつうだったら取っ組み合って乱闘するようなところは、ものを投げただけで終わるとか、ちょっと工夫してましたね。

林:今、楽屋にも人が来ないようにしてるんでしょう?

浅野:そうですね。お花とか、いただきものもダメみたいです。

林:ファンの方からいただいた差し入れを広げて皆さんで食べる楽しみも、なくなっちゃったんですね。

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