ただし問題も発生。ゲスト出演した歌手の麻丘めぐみさんによれば、

「コントが長くなっちゃうと、歌の時間が削られてテンポが速くなるんです。イントロを聞いて『えっ、今日はこんなに速く歌うの』とあせることもありました」

 81年、重大危機に見舞われた。仲本さんと志村さん、番組プロデューサーの3人が、競馬のノミ行為をしていたことが発覚したのだ。

 その日は土曜。会場の小田原市民会館に警察がやってきて、その場でマスコミに発表があった。現場は大混乱におちいったが、いかりやさんは「最後の全員集合になるかもしれない。全力でやろう」と決断。5人全員で舞台を行った後に、記者会見。仲本さんと志村さんの謹慎が決まった。

 高木さんが語る。

「その後どうするか。ゲストを頼んで5人でやろうという話も出た。でも、それじゃあドリフじゃなくなっちゃう。なんとか3人で頑張ろうよと。コントで整列して、長さんが『番号』と言うと、加藤が『1』、僕が『4』と答える。で、長さんの『総員異状なし』でウケました」

 謹慎明けまで「3人ドリフ」が踏ん張った。

「皆さんが努力してくれたことで、復帰できました。ありがたかったです」

 今にしてそう振り返る仲本さん。ドリフターズに入ったときのことを教えてくれた。

 学習院大学に通いながらジャズ喫茶で歌っていた仲本さんは、東京商工会議所への就職の話も出ていた。だが音楽の道に進みたかった。

「親から『そんな不良みたいなこと』と反対されたんですが、いかりやさんが交渉してくれたんです。『工事が辞めるときは、俺が辞めるとき。責任を持ちますから』と」

 濃密な人間関係で作られてきた「全員集合」だが、ついに終幕が。

 高木さんは「寂しいけど、ドリフがなくなるわけではないから」と受け止めた。放送期間中は忙しく「子どもと遊ぶ時間がなくて、罪滅ぼしのため買ったリカちゃん人形が36体になったね」。

 仲本さんは「女の子と付き合う暇なんてまったくなかったですよ。番組が終わってから。それは加藤も同じ。年の差婚は『全員集合』のせい」と苦笑する。

 多くの人間ドラマとハプニングに彩られた、濃密な番組。その現場で汗を流した人の述懐は、実に新鮮に響く。それは五十路(いそじ)の記者の、年齢のせいばかりではないだろう。(本誌・菊地武顕)

週刊朝日  2020年12月4日号